生物系特定産業技術研究支援センター

SIP

第2期 スマートバイオ産業・農業基盤技術

研究成果

スマートフードチェーンプラットフォームによる野菜鮮度の見える化を実証
―データを活用し、朝採れレタスに付加価値を付けてスーパーで販売

掲載日 :2021年6月3日(木曜日)

農業・食品産業技術総合研究機構・NARO開発戦略センターの原田久富美 センター長が代表を務める研究グループは、2020年8月29日にスマートフードチェーンプラットフォームを活用してレタスの鮮度に基づく付加価値向上とトレーサビリティの確保に関する実証実験を行いました。

この実証では、長野県の産地にて早朝に収穫したレタスを出荷し、温度管理を行いながら流通センターを経由して、当日中に大阪市内のスーパーマーケットにて「朝採れレタス」として販売を行いました。出荷・流通・販売のすべての過程において時間と温度を記録し、消費者がスマートフォンなどでその場で簡単に確認ができ、農作物の高付加価値化が可能となります。

本実証では、温湿度と衝撃を記録するセンサーを設置

本グループでは、農水産物の生産現場から流通・販売までの一貫した情報連携を可能とする基盤であるICTプラットフォーム「スマートフードチェーンプラットフォーム(SFP)」の構築を目標としています。  

今回の実証は、このプラットフォームを活用し、食品流通における川上から川下までのトレーサビリティ確保とともに、青果物の品質保証を消費者に訴求する仕組みを構築し、鮮度に基づく付加価値向上とトレーサビリティの向上について情報の整備と検討を行うためのものです。

実証における流通は次のようなルートで行われました。 

  1. 長野県の農業法人栄農人の圃場にて深夜0時から早朝にかけてレタスを収穫。出荷前に真空予冷をおこなったのち、温度・湿度・衝撃を記録するセンサーを設置して出荷
  2. 大阪市内にある小売事業者の流通センターに午前7時に到着。店舗ごとに仕分けされ、出荷
  3. 大阪市内のスーパーにて「朝採れレタス」として販売。店頭にQRコードを掲示し、産地からの出荷記録と温度変化について、SFPを通じてスマホで閲覧できるようにした

流通の各段階では、ケースごとの固体識別番号のバーコードをスキャンして、店頭までの入出荷履歴を記録しました。

実証流通ルート:今朝採りレタス

実証流通ルート:位置関係

本実証では、「本当に今朝収穫したレタスなのか?」という消費者の疑問に答えることができる仕組みにについて、実際の生産・流通・小売というサプライチェーンにおいて検証を行いました。 

当日、店頭で実施した消費者アンケートによれば、「朝採れ」なら通常のレタスの1.5倍程度の価格でも買うという回答が5割を占めました。また、安心して買うため条件として「朝採れ」の商品表示が回答率約8割、「収穫・出荷時間の表示」「生産者情報」「JASマークによる保証」がそれぞれ回答率約6割であり、鮮度の見える化に対するニーズが分かりました。 

 また、JAS表示による生産や流通の段階における品質保証についても、流通事業者と一緒に検討しています。アンケート結果から示唆されるように、「優れた商品が、産地から店頭まで優れた方法で送り届けられた」という情報がJAS表示により保証されることで、消費者に商品価値を分かりやすく伝えられることが期待できます。

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