生物系特定産業技術研究支援センター

SIP

第2期 スマートバイオ産業・農業基盤技術

Creative Researchers - 研究者インタビュー

第6回

青果物流の「見える化」が起こす革命は、農業だけでなく物流にも広がる

第6回 吉間めぐみ・菅原彩華 公益財団法人流通経済研究所

SIP第2期「スマートバイオ産業・農業基盤技術(SIPバイオ農業)」では、食のサプライチェーン、すなわち農産物の生産・加工・流通・販売・消費の各場面で得られるデータを連携し、流通・販売における効率化だけでなく、さまざまなサービスに活用する「スマートフードチェーン」への取り組みを進めています。このスマートフードチェーンを活用した農産物輸送の実証に取り組んでいる参画機関のひとつ、流通経済研究所の吉間めぐみさんと菅原彩華さんにお話を聞きました。

農産物のサプライチェーンの「見える化」に取り組む

――最初にお伺いしたいことは、「スマートフードチェーン」についてです。いろいろなことができそうなのですが、そもそもは何を目指しているものなんでしょうか。

吉間:従来の農産物のサプライチェーンは、基本的に「どこの誰が作ったものなのか」ということが、消費者から見えないものでした。一部、小売業者が生産者と直接取引するような場合は、「顔の見える生産者の作物」として販売されることもありますが、一般的な青果の卸売市場を経由する流通に乗ると、消費者にはどこの誰が作ったものかは一切分からなくなります。

例えば製造業だと、この部品はどこの下請け企業の誰がいつ作ったものだかわからない、なんて管理上はおそらく無いことだと思います。でも農産物だけは、どこから来たものかわからず、○○県産だということだけわかる、みたいな状態が市場の主流になっています。この状況を「見える化」しよう、というのがスマートフードチェーンのベースにあります。

実装にあたっては、見える化のため課題をいくつかに切り分けて、作物の状態や輸送時の環境を測るセンサーを作るチーム、データをWAGRI-DEVという開発中のデータ連携基盤(スマートフードチェーンプラットフォーム、以下SFP)に集約するチーム、集約したデータを提供するアプリケーションを作るチーム、などさまざまなチームに分かれて開発を進めています。私達は実際に農産物を流通させる実証を行うために産地、流通、小売業など協力いただく方々との調整を行ったり、実証実験で開発したものが使えるのか確かめたりしていく実証チームになります。

ただ、この調整がなかなか難しいです。3年前にSIPバイオ農業に参加して、初めてサプライチェーンの事業者にヒアリングした時には「参加して見合うメリットが無いからやらない」って言われました。「見える化」のためにデータを提供しても、商品が高く売れるわけではないでしょう、と。確かにその通りなんですよ。それでも、実証に参加いただけそうな小売店、生産者の方を探し、SFPの意義を説明し、ロールモデルとして取り組んでいただくための調整を行っています。

「運んだものが実際に高く売れるのか」まで確認する実証

――これまでにどのような実証をされたんですか。

吉間:例えば昨年(2020年)は、長野県で早朝に収穫したレタスを同日の昼に大阪のスーパーで「今朝採れレタス」として販売する実証を行いました。早朝に収穫したレタスをコンテナに乗せて、真空予冷をかけ、トラックに積み込んで大阪のスーパーの物流センターまで運ぶ。そこで各店向けに分荷して、昼には店頭に並べます。

レタスの収穫の様子 レタスの収穫は早朝に行われる。収穫されたレタスは、コンテナに収められ、鮮度を保つための真空予冷が行われる。

コンテナの中にはセンサ コンテナの中には温度・湿度・衝撃を測定するセンサが取り付けられ、輸送中のデータを記録する。

産地から出荷されたレタスは、翌朝小売事業者の流通センターに到着。センサーのデータを確認後、店舗ごとに仕分けされ出荷される。

店舗に到着したレタスは「今朝採れレタス」として野菜売場に並べられる。本実証では、POPに掲示したQRコードを消費者がスマートフォンでスキャンし、入出荷履歴と温度管理情報を確認できるシステムを構築した。

実際には、即完売、とまではいきませんでしたが、概ね売れ行きは良く、店舗によっては売り切れるお店もありました。消費者の方にもその場でアンケートを取ったところ、今朝採れという言葉が目を引く、実際に見て鮮度が良いとわかれば買う、本当にその日の朝に長野で採っているとわかれば安心感につながる、といった意見をいただきました。消費者に情報が伝わるということが、非常に重要だとわかりました。

――消費者の目線だと、加工食品はパッケージに製造年月日や賞味期限が書かれているし、生鮮食品の中でも肉や魚は加工年月日がきちんと書かれたラベル貼られている。でも、野菜には無いんですよね。野菜にも肉や魚と同じように、出荷日時が書かれたラベルがほしいと思っている消費者も結構いるのではと感じています。

吉間:「今朝採れ」ならすぐにフレッシュなものを食べられるだけでなく、家に持ち帰ってからも長持ちするということも魅力だったのではないかなと思います。

参加する事業者が増えれば流通効率化につながる

――今朝採れレタスのように付加価値を付けて高く売ったり、スーパーでQRコードを貼り付けて産地を表示したりといった売り方は、まだまだ少数派なんですね。「データを提供する手間をかけてトレーサビリティを表示しても、その分高く売れるわけではないからやらない」というのも、産地、卸、仲卸などの率直な感想なのだと思います。

吉間:大手スーパーなどの小売事業者の多くが他店舗との差別化をする必要があるので、「顔が見える生産者」の農産物を仕入れているスーパーなどもあります。ただし、基本的にはそれだけでは棚を埋められないことも多く、結果的に、半分以上は卸売市場から商品を仕入れることになり、「○○県産」くらいしか分からないものになります。

一方で、ある外資系大手スーパーでは、野菜をすべて契約栽培で仕入れて販売しています。なぜかというと、「市場を通したものはトレースバックできない。我々は誰が作ったのか把握できるものしか売らない」というんですね。

でもそうやって直接契約できる生産者ばかりではないし、生産者から直接買える小売業者ばかりではありません。さまざまな農産物を集約する機能としての卸売市場は必ず必要なので、市場を通るものについてもしっかりトレースバックできるような仕組みを作ることで、農産物の、食のイノベーションが今後起こっていくと思っています。

そのためには小売・流通事業者の協力が不可欠です。消費者との接点をもつ小売・流通事業社が農産物のトレーサビリティを川上側に求めることで、サプライチェーン全体にインパクトを与える可能性があるかと思います。サプライチェーン上の皆さんに協力していただいて、農産物についても、いつ、どこで、採れた、どんなものが、どのような輸送環境で届けられたのかということがわかるような状態に持っていくことは、そう遠くない未来にできるのではないかと思います。多くの供給側が参加するようになれば、物流の効率化のようなメリットも出てくると思うんですね。

――確かに今、物流のコストは高騰しています。手配は卸や仲卸でしていることも多いのでしょうか。

吉間:そうですね。農産物の物流は卸や仲卸で手配をすることもあれば、産地側で生産者が仕立てる場合もあります。基本的に輸送トラックを手配する側の人たちは、輸送コストを下げるためになるべく積載率を上げたい。でも、ドライバーは何箇所も集荷して何箇所も荷下ろしする、というのはなるべくやりたくない。例えば「1台のトラックになるべく多くの農産物を積みたい」という荷主の要望があれば、その要望にあわせた細かい積み下ろしの負担をドライバーが負っています。しかし、今後ドライバーの働き方改革が進められていくと、このようなドライバーへの負担は拘束時間の長さに影響を及ぼしますので難しくなるはずです。したがって、「行き先が同じならどこかで集約してまとめましょう」ということは、今後求められていくはずです。

また、流通コストの削減のために課題の一つとなっているのが、復路の積み荷をいかに用意できるかがコストを大きく左右することです。実際に九州から大阪に農産物を運んでいる物流会社の方に聞くと、大阪の青果市場で野菜を下ろした後は、翌日に大阪南港に寄って港湾倉庫にあるパスタなどの加工食品を積んで戻るとおっしゃってました。この時は早めに九州発の便を仕立てていたため、帰り荷を手配できたと思います。しかしながら農産物の便は当日まで出荷量が分からないことが多いです。往路の便を出発ギリギリに仕立てることができても、復路の荷物まで手配できないことが多いようです。そうすると帰りは必然的に空荷で走ることになり、往復の積載率は50%以下になってしまいます。

農産物を運ぶトラックの積載率、配送先、温度帯などの情報が集約されシェアされることで、農業を超えた他の業界の物流との最適化が図れる可能性があるのでは、と思っています。そうした動きを加速していくためには、繰り返しになりますが、いかに多くのプレイヤーの皆さんに参加していただいて情報を集約していくか、ということが重要になります。

――SFPの実証では、センサーによる温度管理や衝撃管理にも取り組まれています。

吉間:温度、湿度、衝撃といったセンサーについては、すべての作物を全個数管理することは困難かなと思っています。抜き打ちの検査をするとか、一部の高付加価値の品目で対応することになるのではないかと思っています。 特に輸出の場合、コンテナからの積み下ろし後、箱ごと放り投げられるといった、ひどい扱いをされることもあるようです。衝撃センサーのデータで、どこで衝撃を受けたので傷がついた、といった要因が分かることが期待できます。

SFPでは、農産物の取扱方法についてのJAS認証制度の整備にも取り組んでいます。品目によって、しっかりと管理して運ぶことで得られるものがあれば、それが付加価値になります。

将来は生産者に消費者の声が届くシステムへ

――スマートフードチェーンでどのようなことができるか、どのような課題を解決できるかというお話をいろいろと伺いましたが、他にこんなことができるようになる、というのはありますか。

吉間:スマートフードチェーンが実現するのは、例えばどこで採れたキャベツがいつ、どこを通ってどこで売られたか、ということが、市場を通っていても分かるということです。つまり、何かあった時にはきちんと生産者までトレースバックできます。現在は、おそらく何月何日にどこで集荷されたもの、くらいまで遡るのが限界です。これが一気に「どの生産者のどの圃場」まで遡れるようになると、生産者の意識も変わってくると思います。

今は、生産者が自分の情報を公開しても、小売との直接取引でなければ消費者まで伝わることはほぼ無いんですね。減農薬や有機栽培を一生懸命がんばっていても、卸売市場やJAの共選に入ると、団体の中の一人となってしまって差別化にならない。でもスマートフードチェーンで生産者の情報が消費者に伝わるようになれば、「〇〇さんがいつ出荷したキャベツがとても美味しかった」と消費者が認知できます。

今のスマートフードチェーンでは、消費者の声を直接生産者に届ける仕組みはありませんが、将来的にはWAGRI-DEVを活用して消費者の声を集約し、生産者に届けるようなアプリを開発してくれればいいなと思っています。それは生産者にとってものすごいモチベーションの向上につながるでしょうし、生産力や品質が向上していくことにつながる可能性は大いにあると期待しています。

考え方とやり方でリターンが大きく変わるのが農業の魅力

――吉間さんはなぜ、農業と物流というテーマに取り組むようになったのですか。

吉間:もともとは農業にそれほど興味があったわけではなかったのですが、大学院のゼミの先生に紹介されたのが前職の農業系コンサルティング会社だったのです。当時、農業経営塾という若手の農業経営者を教育するセミナーをを各地で実施していまして、私もカリキュラムを作ったり、ティーチング・アシスタントに入ったりしていました。そこで地方の若手農業者の方に多くお会いして、農業って本当にやり方と考え方で全然リターンが違う、おもしろい産業だなと感じ、のめり込んでいきました。

その後、流通経済研究所に転職しまして、農産物もPOSシステムに乗せて、作ったものがいつどこで売れたが分かるようになれば、根本的に考え方が変わって農業界にイノベーションが起こる、と考えるようになりました。そこにSIPバイオ農業の話が来て、これはまさに私がやりかたったことだと思い、当プロジェクトに参加しました。

――菅原さんは2021年3月に大学を卒業し、こちらに入所されて間もないですよね。流通経済研究所に入ってすぐにSIPバイオ農業の担当になっていますが、以前から農業分野に興味があったのですか。

菅原:家が農家なので、もともと農業は身近なものでした。大学でも農業と何かをかけ合わせた研究をしたいと思っていました。もともと大学ではバイオ分野の研究をしたかったんですが、慶応大学の神成先生のゼミで開発した農業の暗黙知を見える化するAI学習アプリを知って、「こういうものがあれば若い人ももっと農業に入りやすくなるのかな」って感じて、農業と情報という分野で仕事をしたいと思うようになりました。

自分の軸になっているのは、本当に農業が大好きで、農業をより良くしたいという気持ちです。実際に農業の現場にお手伝いにいくと、情報が遮断されているということをすごく感じました。農家は農家だけで集まって議論しているし、物流側は物流側だけでがんばって、一部の意識の高い生産者だけがつながっているみたいな状況があって、そこをつなぐ存在になりたいと思っています。

――実際に「農業×情報」への取り組みを初めてみて、どうですか。

菅原:学生時代に比べると、行政の熱心な担当者や、アンテナを張って新しいものを積極的に取り入れる生産者さんに会うことで、こんなに農業に対して熱い思いを抱いている方がいることを知れるのが楽しいです。あと、研究者と現場の人たちが、どちらが上、下という関係ではなく、一緒になって議論しているところは、学生の時には見えなかった部分ですごいと感じています。現場から「ここを改善したい」「こうすれば面白い」という意見に対して、研究者もただ受け入れるのでなくできる範囲を見極めて実現につなげているんです。

吉間:商習慣を始めとして、従来のやり方があって「そうでなくてはいけない」という考え方に関係者の皆が縛られているところもあるので、どう変えていくかというのが工夫のしどころですね。いきなりドラスティックに変えようとすると反発も大きく、なかなか変えられないので、少しずつ理解してもらう、メリットを追求するといった方法で違う状況を作り出していくというのが面白いと感じます。

協調領域だからこそ国のプロジェクトで整備する納得感

――SIPバイオ農業の中でも、最も農業の現場に近く、かつ全体を見ているのがSFPだという印象があります。農業というどちらかといえば保守的な分野で、国のプロジェクトとして研究した成果を現場にフィードバックしていくというのは大変なご苦労があるのではないかと思うのですが、そこに対して手応えを感じている部分はありますか。

吉間:逆に、国がそこに予算をつけているという認識を持ってもらえる点がプラスになる部分もあります。どこかの民間企業が作ったプラットフォームに皆が参加してください、ではなく、「協調領域と競争領域をしっかり分けて、協調領域は国がやる」ということには腹落ちしてもらえるんですね。同時に、「参加するにはメリットがほしい」とは言われるんですが。

――参加者が自らメリットを見つけることが大事なのではないかと思うのですが。

吉間:やる気のある人は自分でメリットを見つけるんですよ。でも、そもそも現状で良いと思っている人は、自分から見つけてくれないので、こちらから働きかける必要があります。例えば「1から5までプレイヤーがいるうち、1,2,4,5がやるといえば3である自分はやらざるを得ないよね」という状況に持っていくのもひとつの作戦だし、そうして参加することで今までのやり方がどう変わるのか、どんな未来図が描けるか、という一歩先が見えれば理解いただける方は増えるかなと思います。

私達が考えているSFPの一部をカバーしているようなものは海外にもあるので、そういうものを説明するとわかっていただけることもあります。

――海外の事例というとどんなものですか。

吉間:2つほどありまして、1つは欧州のGS1 Germanyが運営するトレーサビリティのプラットフォーム「fTRACE」が挙げられます。特にドイツでは小売業のメトログループが水産物をメインにしたトレーサビリティのシステムとして導入しています。メトログループでは環境保護の観点から乱獲された魚を避け、MSC認証やASC認証など持続可能な方法で獲られた水産物を取扱うこととしています。したがって、これらの認証を受けていることが分かるように、多くの水産加工メーカーはfTRACEに参加しています。

もうひとつ、「IBM Food Trust」は、ブロックチェーンの技術を活用した、食品サプライチェーンの生産者、加工業者、卸売業者及び小売業者などの協業ネットワークです。アメリカ最大手量販店のウォルマート、クローガーやカルフール、またドール、ネスレやユニリーバといった大手企業も参加しています。加入している小売業と取引するためには契約対象者は参加する必要があるということから参加者が増加傾向にあると聞いています。特にウォルマートでは2019年に早期の同システムの導入がもとめられたのですが、その背景はロメインレタスに大腸菌O157:H7が発生し、集団感染があったことなどが影響しています。

――どちらも下流の小売が先に参加して、トレースバックできない産品は扱わないという方針を示したので対応するために上流の流通や生産者が参加していった、という流れですね。SFPも大手の小売店に働きかけたりはしないのですか?

吉間:まだこれからの取り組みだと思います。ただ、小売業の多くは既に独自のシステムでトレースバックできる仕組みを構築していますし、生産者側でも栽培に関するシステムについては既にいろいろなシステムが入っています。そういうものとの調整が必要になってくると思います。

農業や流通のあり方を変えることの当事者になる面白さ

――いま、今後は研究者としてどのようなテーマに取り組んでいきたいと考えておられますか。

吉間:農産物の物流という分野で大きな課題になるのがやはりドライバーの「働き方改革」で、2023年度で猶予期間が終わって2024年4月からはいよいよ罰則付きの時間外労働規制が適用されます。

SIPバイオ農業の1年目に、九州から出荷する農産物を大阪・東京の市場に運ぶ共同物流の実証を行うなかで、鹿児島・熊本から大阪まで走るトラックの後ろをレンタカーで実際に追跡させていただきました。この時もちろん同じパーキングエリアで休憩することになりますが、ドライバーの皆さんから現場の話をうかがいたいと、一緒にコーヒーを飲みながら、ヒアリングさせていただきました。農産物を運ぶのは大変だが、冷凍食品をべた積みべた降ろし(パレットを使わない積み上げ積み降ろしのこと)の方が辛いとか、最近の若いドライバーは近距離を運びたがる傾向があるといったようなドライバーの生の声を聞けました。

また駐車するトラックが多すぎて仮眠予定のパーキングエリアに入れなかったため、次のパーキングまで走らざるを得なかった話なども伺いました。話を聞いていると、農産物の物流は改善すべき点があまりにも多いと実感しました。逆に言えば、課題が満載なのでビジネスチャンスが広がっているとも捉えられると思います。

働き方改革の実現のために、農産物の物流は変わらざるを得ない。最終的には先程も申し上げた通り、農産物の物流と他産業のコラボレーションも含めた最適化ができればと考えていますし、そこにSFPも貢献できればと思います。

――菅原さんはいかがでしょう。

菅原:出身地の山形県鶴岡市では多くの在来作物が栽培されていて、興味を持っています。そこで強みを出していけるような活動ができれば、と思っています。

――この分野に興味を持たれた研究者の方に、メッセージをお願いします。

菅原:私が神成先生のゼミに行くきっかけになったのが、大学の先輩に頼まれてAG/SUMという農業関係のイベントのボランティアとして参加したことです。このイベントでうちの大学でも生産者と関わる農業をテーマにした研究ができると知って、バイオ寄りの志望から、方向転換を決意しました。ちょっとしたきっかけやチャンスを逃さないことでさらに面白いことに出会える可能性があるので、少しでも「良いかも」と思ったら行動を起こしてもらえたらいいなと思います。

吉間:SFPが完成すれば、その先の農業や流通は今とは異なる形になります。農業や流通のあり方を変える当事者になれる、変わる瞬間に立ち会えるかもしれないというのは、非常に魅力的だと思っています。

そこでさまざまなプレイヤーが生き残りのために戦略を立てていかなくてはいけない。我々はその支援をするために実証をやったり、データを出したりということが面白いなと感じています。一般的な研究者の感覚とはちょっと違うかもしれませんね。どうしたら良くなるか、ということを考えるのが好きなんです。

吉間 めぐみ(よしま・めぐみ)

公益財団法人流通経済研究所 農業・環境・地域部門 主任研究員
明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科 グローバル・ビジネス専攻修了。商社、旅行会社、農業コンサルティング会社を経て2016年より現職。
専門は、農産物物流に関するコンサルティング支援、海外農業に関する調査案件(日本語と英語のバイリンガル)、施設園芸に関する調査案件、ブランド戦略策定、マーケティング戦略策定支援、他産業から農業参入における企画・戦略立案、農業分野における新規事業立ち上げなどの支援、農業生産法人に向け生産性向上コンサルティング・品目別マーケティング支援など。

菅原 彩華(すがわら・あやか)

公益財団法人流通経済研究所 農業・環境・地域部門 研究員
2021年3月 慶應義塾大学環境情報学部 卒業
2021年4月 公益財団法人流通経済研究所 入所
学生時代は1年生より神成研究室に所属。AI学習アプリの使用や機能性表示成分の研究、農作業時における暗黙知の技術の研究など、農業を軸とした研究を実施。今後は、農業の中でも特に在来作物についての研究を検討している。