畜産研究部門

飼料作物ゲノムユニット

ニカラグアテオシント(左, 耐湿性極強)とトウモロコシMi29(右, 耐湿性弱)の耐湿性。5葉期の植物体に0.1%のデンプン溶液を16日間にわたり湛水・還元処理を行った。

飼料作物ゲノムユニットでは、飼料作物・牧草・資源作物を研究対象として、DNAマーカーを用いた新規育種素材の開発、遺伝子単離、遺伝子組換え・ゲノム編集技術を利用した画期的な品種作出のための基礎研究を行っています。主な取り組みは、「トウモロコシ耐湿性のDNAマーカー育種・遺伝子単離」、「遺伝子組換えとゲノム編集」、「ブラキアリアのDNAマーカー育種」です。

トウモロコシ耐湿性:我が国における重要課題であり、しかも世界的に見ても強く求められているものは耐湿性トウモロコシの作出です。トウモロコシの耐湿性研究は国内外において古くからなされていますが、最もゲノム研究が進んでいるアメリカにおいてもこれまでのところ耐湿性の強い実用品種は得られていません。そこで当ユニットでは、耐湿性が極めて強いニカラグアテオシントを用いて、耐湿性に関連する形質を個々に解析してDNAマーカー育種を行うという独自の取り組みを進めています。また、耐湿性向上に重要な根の酸素漏出バリア形成能などの遺伝子単離に向けた共同研究も進めています。

遺伝子組換えとゲノム編集:遺伝子組換えについては、機能性成分(コエンザイムQ10)を高めた飼料用トウモロコシの作出などを進めています。また、突然変異をピンポイントで遺伝子に導入できる技術として近年急速に注目を集めている「ゲノム編集」について、現在は国産トウモロコシ系統に応用するための技術開発と、それを活用した高消化性品種の開発を中心に進めています。

ブラキアリアの育種:ブラキアリア属牧草は日本では沖縄を中心に南西諸島での利用が始まった牧草で世界では南米を中心に1億haに迫る栽培面積を持つ熱帯牧草の基幹草種です。交雑育種が困難なアポミクシス性の植物であることから、優れた農業特性を複合的に持つ優良な品種はこれまであまり育種されてきませんでした。そこで、我々は、国内外の研究機関と共同研究体制を組み、牧草で最も重要な形質である収量と消化性に注目し、超省力・多収品種育成のためのDNAマーカー開発を進めています。

以上のように、飼料作物ゲノムユニットでは独創性が高い研究をユニット内外で連携しながら取り組んでいます。


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