要約
ナスの地際部に設営したトンネル内に枝ダクト(直径13cm)を挿入して株元部を加温すると、12月以降の商品果収量が増加する。本技術によりハウスの暖房温度を10℃から8℃に下げることが可能となり、燃料消費量を45%に削減できる。
- キーワード: 促成ナス、トンネル、枝ダクト、株元加温、燃料費
- 担当: 福岡農総試・筑後分場・野菜チーム、(株式会社Zen)
- 代表連絡先: Tel:0944-32-1029
- 区分: 九州沖縄農業・野菜・花き
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
促成ナス生産はハウス内の最低気温が10℃を下回らないように暖房を行う必要があるため、燃料費が高額になる。特に、近年は暖房用燃料価格の高騰から生産コストが増大し、生産現場からは暖房コストを大幅に削減できる新しい栽培管理技術の開発が求められている。本県では促成ナスの株元部のみを加温することにより、果実生産力が向上することを明らかにした(特開2007-259727、株式会社Zenとの共同研究)。
そこで、この局所加温の技術シーズを基に収量を向上させ、設置が容易で導入コストが安価な株元加温技術を確立する。
成果の内容・特徴
- 暖房機の主ダクトに繋げたダクト(直径13cm)をナスの地際部に設営した透明フィルムのトンネル内に挿入する(以下、ダクト加温)と、無処理より収穫果数が増加するのに加えて、曲がり果、細果の発生が減少して商品果率が高くなり、12月以降の商品果収量が増加する(図1、表1、一部データ略)。
- 暖房温度8℃ハウスで12月から4月の間にダクト加温を行うと商品果収量が暖房温度10℃ハウス(無処理)と同等で、暖房温度を下げることが可能となり、燃料消費量を45%、燃料費を約24万円/10a削減できる(表1、表2)。
- 本技術で必要な資材はトンネル資材、トンネル加温用枝ダクトだけであり、費用(試算)は約4万円/10aであるが耐用年数を2年とすると1年で約2万円となる。資材設置には10a当たり約14時間を要する。
成果の活用面・留意点
- 促成ナスの省エネ栽培技術資料として活用できる。
- 暖房機から遠い位置のトンネル内温度を上げるため、畝長さが約40m以上のほ場ではトンネル加温用枝ダクトの先端を閉め、先端部の1/4部分に排気口(1辺約6cmの正方形)を4口設営する。また、ハウス内の温度ムラを少なくするため、トンネル加温用枝ダクト(直径13cm)を7本追加する毎に既存のハウス暖房用枝ダクト(直径40cm)を1本減らす。
- 暖房機のサーモセンサーは、ハウス内気温を制御する従来と同様の位置に設置する。
具体的データ
(福岡県農業総合試験場)
その他
- 研究課題名: 局部加温による冬春野菜の低コスト増収技術の開発
(1)ナスの実用的な株元加温技術の確立 - 予算区分: 県単
- 研究期間: 2007~2009年度
- 研究担当者: 森山 友幸、水上 宏二、平田 祐子
- 発表論文等: 特開2007-259727