食品研究部門

食品機能評価ユニット

時間栄養学 (Chrono-nutrition)

時間栄養学とは?

一言で表すと、「体内時計を考慮に入れた栄養学」のことです。体内時計を扱う生物学を時間生物学(Chronobiology)と呼び、栄養学(Nutrition)とオーバーラップする部分が「時間栄養学(Chrono-nutrition)」にあたります。基本的には、栄養効果が時刻によって変化するといった内容や、栄養素や食品成分によって体内時計が変化するといった内容を取り扱います。ここ数年で急速に発展している新しい学問分野であり、日々、新しい知見が蓄積されています。

時間栄養学とは

時間栄養学による知見の紹介

1.朝食による体内時計のリセット
食事は、末梢組織に存在する体内時計(※体内時計は、ほぼ全身の細胞に存在しています)の時刻決定因子として働いており、多くの身体機能は、食事をいつ食べたのかを目安にして活動期と休息期を決定しています。特に、朝食の摂取時刻が重要で、それを活動期の開始時刻であると認識します。朝食を抜くと、学習や運動能力のパフォーマンスが低下したり、やる気も低いという知見が報告されています。朝食による末梢時計のリセットには、タンパク質(アミノ酸)と炭水化物(糖分)の両者が必要であることが明らかにされており、バランスの良い朝食を規則正しく摂取することが望ましいと考えられます。また、朝食の摂取頻度が少ない人ほど肥満になりやすい傾向にあることが報告されています。

2.食品成分による体内時計への影響
これまでの研究(主に動物試験)により、食事成分の違いにより、体内時計がある程度の影響を受けることが明らかにされています。例えば、高脂肪食は体内時計を伸長させ、リズムを減弱させることが示されています。一方で、カロリー不足の状態や低炭水化物食では、体内時計の短縮や前進が報告されています。また、コーヒーに含まれる程度のカフェインにより体内時計が伸長することや、高食塩食により、末梢組織の体内時計が前進することが明らかにされています。

3.食事時刻による代謝への影響
マウスに高脂肪食を4ヶ月間与えた実験によると、いつでも好きな時刻に食べられるように与えた群と、活動期の8時間のみに制限して与えた群では、1日当りの摂取総量は同じでも、前者は典型的なメタボ(肥満)になり、後者はほとんどメタボにならなかった(体重、血液検査の値ともにほぼ正常)ことが報告されています。このように、例え同じ量の食事であっても、摂取時刻によってエネルギー代謝に与える効果が異なることが知られています。ヒトの場合、朝食を抜く回数が多い、あるいは、夜食の頻度が高い人ほど肥満の傾向が強くなります。また、1日あたりの摂取カロリーをそろえたダイエット実験においても、朝食を多くして夕食を少なくした方が、その反対よりも体重減少効果が高いことが報告されています。

4.まとめ
これまでの知見から、ヒトでは、食事時刻が夜型になるほど肥満(メタボ)になりやすいことが示唆されており、健康でパフォーマンスよく生活するためには、バランスの良い朝食を規則正しく摂ることが良いと考えられます。また、今後は、健康効果を期待した機能性食品などにも、効果的な摂取時刻に関する知見が集まっていくことが期待されます。

 

時間栄養学の概念図

  時間栄養学の観念図

 

上記内容に関する詳細は下記総説等をご参照ください
Oike H*, Oishi K, Kobori M(*責任著者:大池秀明)
“Nutrients, Clock Genes, and Chrononutrition” Current Nutrition Reports 3(3), (2014)
[ダウンロード]
大池秀明:「食品・栄養成分と生体概日リズムの相互作用に関する研究」(外部リンク;日本農芸化学HP内)

 

朝食と学力、やる気等に関する研究の紹介は下記HPをご参照ください
農林水産省/めざましごはん

時間栄養学に関する情報(リンク)