農村工学研究部門

農村工学研究部門メールマガジン

メールマガジン第28号(2012年 7月号)

目 次

1)トピックス
■粘り強い盛土構造の情報交換会
2)新技術の紹介
■農林水産省が農業新技術2012(解説編)を作成
3)水土里のささやき
■「水の週間」シンポジウムの開催 ~東京都~
4)最新の「農工研ニュース」より
■流域の水循環を踏まえた水田地区の用水管理~水文モデル開発~
5)農村工学研究所の動き
■農地等の物理的除染の研究成果および技術に関する検討会の開催 ~福島県~
■東日本大震災の復旧復興のための技術相談会の開催 ~宮城県~
6)農村の草花
■空き屋や休耕田を覆い尽くすほど旺盛に生育するこの草の正体は ~カナムグラ~
7)研究者の横顔
■中田 達(なかだ とおる)

1)トピックス


■粘り強い盛土構造の情報交換会

3.11津波災害を教訓にして、堤防等の盛土構造物の復旧には、粘り強い構造が必要という認識が共有されました。この緊急課題に取り組んでいる産学官の技術者や研究者に呼びかけ、6月29日に、当所において情報交換会を開催しました。外部参加者は30名でした。

農工研では、粘り強い盛土構造として、補強土工法を適用する研究を進めています。今回は、その成果の一部を水理模型実験でPRしました。また、国土技術政策総合研究所、鉄道総合技術研究所、東京理科大学には、これまでの研究成果を発表いただきました。

一日も早い被災地の復旧・復興を実現するためには、組織を超えて技術情報を共有し、学際レベルで作業を分担し、質の高い技術を効率的に開発して社会に提供していく必要があります。そのためにも、このような集会をさらに充実させていきたいと考えています。

施設工学研究領域 土質担当主任研究員 松島健一

(関連資料)
(1)見学者の感想(東京理科大学 山口晋平 様)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/28/01-01.pdf
(2)津波実験(動画:2分31秒)
[Windows]
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/28/01-02.wmv
[Mac]
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/28/01-02.mpg

2)新技術の紹介

■農林水産省が農業新技術2012(解説編)を作成

農林水産省は、早急に生産現場に普及すべき農業技術を「農業新技術200X」として、毎年選定しています。この度、4月選定の「農業新技術2012」の解説編が作成されました。なお、本年は「震災復興等を支援する技術」が併載され、両方で、農工研の以下の5つの開発技術が取り上げられました。

  1. 「農業新技術2012」として1件
  2. 農地の排水性を改良する低コストな補助暗きょ工法
  3. 「震災復興等を支援する技術」として4件
  4. 農地の塩害を軽減する除塩技術
  5. 小規模農業用コンクリート水路の簡易な漏水補修工法
  6. ため池の決壊危険度と予想氾濫エリアを自動配信する防災システ ム
  7. 従来工法よりも水による侵食に強い堤防の補強技術


さらに詳細をお知りになりたい場合には、お気軽にお問い合わせ下さい。

技術移転センター 移転推進室長 寺村伸一

(農業新技術2012 解説編:農村工学分野を抜粋)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/28/03-01.pdf
(プレスリリース)
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/120706_1.htm

 

 3)水土里のささやき

■「水の週間」シンポジウムの開催 ~東京都~

7月27日に、科学技術館サイエンスホール(千代田区北の丸公園)において、『水の恵みを未来に~健全な水循環の再生を目指して~』をテーマとしたシンポジウムを開催しました。

8月は、1年を通して一番水を使う量が多い月です。そこで、節水を呼びかけるために、8月1日が水の日とされました(昭和52年5月31日閣議決定)。そして、この日から一週間が水の週間です。この機会に、水資源の有限性、水の貴重さ、水資源開発の重要性について関心を高めていただきたいと思います。

国土交通省 水管理・国土保全局 水資源部 水資源政策課 専門調査官 吉田弘明(農水省から出向中)

(関連URL)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/28/02-01.html

 4)最新の「農工研ニュース」より

■流域の水循環を踏まえた水田地区の用水管理~水文モデル開発~

農業用水は、水需要全体の約70%を占めています。そのため、用水配分や管理は、気候変動による水循環変動などの自然的な要因のみならず、人口増加や大規模な灌漑開発プロジェクト実施などの社会的な要因に大きな影響を受ける潜在的なリスクを抱えています。

水文モデルによって、地表上の水の流れを的確に把握できるようになれば、それはあたかも天気予報のように、日々の水資源の配分や管理を行う際に欠かせないデータを提供する情報基盤となります。私たちは、近未来の水社会に貢献できるよう、本モデルの信頼性の向上に取り組んでいます。

 水利工学研究領域 水文水利担当研究員 吉田武郎

(関連資料)
(1)農工研ニュース第79号
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/28/04-01.pdf
(2)この研究成果をもっと深く理解するための6つのQ&A
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/28/04-02.pdf

5)農村工学研究所の動き

■農地等の物理的除染の研究成果および技術に関する検討会の開催 ~福島県~

7月11日に、「コラッセふくしま」(福島市)で、除染の研究成果と技術に関する検討会を開催し、行政部局等の農地除染担当者ら140名の方々に参加いただきました。

検討会では、農研機構傘下の研究所が、外部研究資金等を活用して技術開発した農地等の物理除染技術に関する研究成果を紹介し、その実用化や費用等の課題解決に向けて質疑応答が行われました。また、参加者からは、汚染土の発生がより少ない手法や、既耕地にも適用可能な土壌攪拌による除染技術等について開発の要望が出されました。

農工研では、今後も、農地や農業用水等における放射性物質の除去・低減技術の開発を進めて参ります。

企画管理部 研究調整役 奥島修二

(関連資料)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/28/05-01.pdf

 

■東日本大震災の復旧復興のための技術相談会の開催 ~宮城県~

7月11日に、宮城県東部地方振興事務所(石巻市)において、標記の技術相談会を開催しました。これは、宮城県と農工研との間で、6月13日に締結されたパートナーシップ協定の趣旨に沿って企画されたものです。当日は41名の関係者に参加いただきました。

石巻市周辺の沿岸地域も、3.11大津波災害を受けました。そのため、農業農村の復旧に当たり、海岸から農地への塩分浸透、潮受け水路、機械排水の相互作用を踏まえた設計の考え方について、当所に技術相談が寄せられました。

宮城県の震災全地域を対象にした東日本大震災の復旧復興のための実用新技術講習会及び技術相談会は、8月9日に、宮城県土地改良会館(仙台市)で開催致しますので、お気軽にご参加下さい。

技術移転センター 移転推進室長 寺村伸一

(7.11技術相談会の模様)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/28/05-02.pdf
(8.9実用新技術講習会及び技術相談会のご案内)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/28/05-03.html

 6)農村の草花

■空き屋や休耕田を覆い尽くすほど旺盛に生育するこの草の正体は ~カナムグラ~

夏本番を迎え、方方で雑草の繁茂が見られるようになりました。今回紹介するカナムグラも、ツルを伸ばし、他の植物などに絡みつくなど、盛夏に旺盛に生育する身近な植物の一つです。この草、ビールの原料となるホップの近縁種であることをご存じでしょうか。

農村基盤研究領域 資源評価担当主任研究員 嶺田拓也

(関連資料)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/28/06-01.pdf

 

 7)研究者の横顔

■中田 達(なかだ とおる)

中田さんは、富士山の雄大な景色の中で育んだ人の気持ちを暖かくする包容力と、長年続けた剣道で身につけた粘り強い根性の持ち主です。現在は、日本各地を研究フィールドとし、地方の美酒を活力にしながら、水路システム研究のアイデアを日夜練っています。ご実家の水田で、田植えや稲刈りをご自身でもされているとのことで、まさに、地に足の着いた研究を実践されています。(他己紹介:渡嘉敷 勝)

(自己紹介)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/28/07-01.pdf


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