所長挨拶

世界的な食料情勢の変化に伴う食料安全保障上のリスクの高まりや、地球環境問題への対応、海外の市場の拡大等、我が国の農業を取り巻く情勢は想定されなかったレベルで変化しています。こうした情勢の変化を踏まえ、食料・農業・農村基本法が改正され、2024年6月に公布・施行されました。また、農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律(スマート農業技術活用促進法)が成立し、2024年10月1日に施行されました。このような背景の下、野菜花き分野でもデータ利用によるスマート化が求められています。
野菜花き研究部門では、育種・生産技術のスマート化による野菜・花き産業の競争力強化を目標に、育種においては気候変動や連作等により増加する病害虫被害に対応する品種や、輸出拡大のための高輸送性品種の開発に取り組んでいます。生産技術としては、これまでに施設野菜(トマト、キュウリ、パプリカ、イチゴ)および露地野菜(キャベツ、レタス、ネギその他)を対象に、植物生理に基づいた生育収量予測技術を開発しています。これらの生育収量予測技術は、品目や品種を拡大しながら、生産現場への提供が始められ、生産者の収益向上に大きく貢献することが期待されます。
今後は、生育収量予測技術と、センシング、品質予測およびコスト・エネルギー・CO2排出の算出とを融合させることにより、生産者の収益増加やエネルギー利用効率の向上が必要です。また、野菜花きの生産には、人手による綿密な作物管理やたくさんの作業が求められることから、労力不足に対応するスマート技術開発は特に重要な課題となります。さらに、自動収穫等に対応した生産技術の変化やエネルギー・資源の削減等に対応した品種育成もますます重要となります。
野菜花き産業の発展に向け、関係者のみなさまには、当部門へのご協力とご指導をいただきますよう心よりお願い申し上げます。
農研機構野菜花き研究部門
所長東出 忠桐