要約
フォリオブラボ顆粒水和剤を基軸とした、バレイショの生育ステージと薬剤の性質を考慮した防除体系は、合計3回の散布でジャガイモ疫病の発生を効率的に抑制できる。
- キーワード: バレイショ、ジャガイモ、疫病、防除体系
- 担当: 長崎農技セ・馬鈴薯研究室、鹿児島農開セ・病理昆虫研究室
- 代表連絡先: Tel0957-36-0043
- 区分: 九州沖縄農業・病害虫
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
西南暖地におけるバレイショ栽培の主要な作型である春作栽培で使用される薬剤では、疫病を対象としたものが最も散布回数が多い。栽培現場では労力低減や生産コスト削減のため、薬剤散布回数低減技術の確立が求められている。そこで、散布回数の低減と防除効果の安定を両立した効率的なジャガイモ疫病防除技術を確立することを目的に、各種薬剤の特性とバレイショの生育ステージを考慮した防除体系を構築する。
成果の内容・特徴
- 散布後に伸長部位に成分が浸透・移行する薬剤であるフォリオブラボ顆粒水和剤を茎葉伸長旺盛期(図1)に使用する防除体系(表1、図2、体系1・2)は、ジマンダイセン水和剤を14日間隔で散布する場合(表1、図2、対照1)に比べて防除効果が優り、ジマンダイセン水和剤を7日間隔で散布する場合(表1、図2、対照2)とほぼ同等の防除効果を示す(表1、図2)。
- 茎葉伸長期(図1)に疫病感染直後にも効果が期待できる浸達性を有する薬剤と茎葉伸長完成期(図1)に長期残効性があり、塊茎感染防止効果があるランマンフロアブルの散布は防除効果が高い(表1、図2)。
- 以上より、フォリオブラボ顆粒水和剤を基軸とした、バレイショの生育ステージと薬剤の性質を考慮した防除体系(表2)は、合計3回の散布で疫病の発生を効率的に抑制できる。
成果の活用面・留意点
- 本成果は西南暖地におけるバレイショ春作栽培の労力軽減およびコスト低減(表1)を図る際に、薬剤の総散布回数低減技術として利用することができる。
- ジャガイモ疫病は、多雨などの病原菌にとって好適な気象条件下では急速に発生が拡大し、天候不順のために防除薬剤の散布が遅れた場合には甚大な被害を発生させる。そのため、本病の被害を抑制するには発生前からの薬剤の予防散布が必要である。
- メタラキシルを成分として含む薬剤(本成果情報では、フォリオブラボ顆粒水和剤)を連用した場合には、本成分に対する耐性菌が発生する可能性があるので連用しない。
具体的データ
(小川 哲治)
その他
- 研究課題名: ジャガイモ病害虫に対する新農薬の作用機作
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 1987~2010年度
- 研究担当者: 小川 哲治、西 八束(鹿児島農開セ)、平田 憲二