要約
大規模露地圃場に対応した黄色高圧ナトリウムランプによるヤガ類の被害防止法は、レタス、キャベツにおいてヤガ類の被害を低減させる。また、当ランプの効果が及ばないアオムシ、コナガに対してはBT剤散布と組合せることで被害を抑制し、化学農薬の使用を低減できる。
- キーワード: 大規模露地圃場、黄色高圧ナトリウムランプ、減化学農薬、レタス、キャベツ、チョウ目害虫
- 担当: 長崎農技セ・病害虫研究室、九州沖縄農研
- 代表連絡先: Tel:0957-26-3330
- 区分: 九州沖縄農業・病害虫
- 分類: 技術・参考
背景・ねらい
大規模露地野菜栽培における黄色高圧ナトリウムランプ(以下、黄色灯)を使用したチョウ目幼虫の効率的防除技術を確立するために、これまで黄色灯の設置法について検討し、ヤガ類のバレイショに対する被害低減の有効性を明らかにしている(九州沖縄農業研究成果情報第25号)。今回は、黄色灯照射によるチョウ目幼虫のレタス、キャベツに対する被害低減効果を明らかにするとともに、減化学農薬の防除技術を検討する。
成果の内容・特徴
- 本設置法([具体的データ]を参照)による黄色灯照射は、レタス、キャベツにおけるヤガ類(ハスモンヨトウ、シロイチイモジヨトウ、ヨトウガ、ハイマダラノメイガ、オオタバコガ、ウワバ類)幼虫の発生を抑制する(図1-III、IV、図3-II、IV)。
- レタスにおいて、黄色灯照射はヤガ類幼虫による被害を低減する(図2)。さらに、黄色灯照射に加え、オオタバコガに対する重要な防除時期である結球始期、肥大期に化学農薬を2回散布する体系は慣行防除体系と同等以上に被害を低減し、散布回数を慣行防除と比べ50%削減できる(図1、図2)。
- キャベツにおいて、黄色灯照射はアオムシ、コナガ幼虫の発生を抑制できず(図3-VI、VIII)、その被害が大きくなるが、黄色灯照射に生物農薬(BT剤)を組み入れる散布体系は、慣行防除体系と同等にヤガ類、アオムシ、コナガ幼虫による被害を低減できる(図4)。
成果の活用面・留意点
- 黄色灯照射による被害防止効果を得るためには、照度1~2.5lux以上が必要とされており(江村ら、2004)、本設置法はこの条件を保持できる。
- アブラムシ類が多発生する場合は、別途防除が必要となるので圃場内を観察する。
- 供試品種(レタス:サウザー、キャベツ:新藍)への生育への影響は達観では認められないが、ホウレンソウ、エダマメなど作物によっては生育異常や品質低下等を招くことがあるため、周辺作物に配慮する。
- 本設置法に使用した照明器具は、(株)パナソニック電工製の総称:HIDイエローガード(灯具:YAH54165、ランプ:NH270F・L-4、安定器:3002HA-14G)である。黄色灯1台に係る経費は約20~25万円(設置工事費除く)で、電気代は1日12時間点灯で、約65円/日である。
具体的データ
(高田 裕司、寺本 健)
その他
- 研究課題名: 諫早湾干拓地における環境保全型大規模生産技術体系の構築
- 予算区分: 国庫(実用技術)
- 研究期間: 2007~2009年度
- 研究担当者: 高田 裕司、松尾 和敏、寺本 健、柏尾 具俊(九州沖縄農研)