九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

アセタミプリド剤に対する感受性が低下したオンシツコナジラミの発生確認

要約

大分県のイチゴとトマトから採集されるオンシツコナジラミ個体群は、成幼虫ともにアセタミプリド剤に対して感受性低下が認められる。そのため、本個体群の防除には代替薬剤への切り替えを推奨する。

  • キーワード: オンシツコナジラミ、感受性低下、アセタミプリド
  • 担当: 大分農林水研・農業研究部・病害虫チーム
  • 代表連絡先: Tel:0978-37-1893
  • 区分: 九州沖縄農業・病害虫
  • 分類: 技術・参考

背景・ねらい

2005年以降、オンシツコナジラミの多発生が、中山間地域を中心にトマトおよびイチゴで認められている。本虫に対する新規登録薬剤の殺虫効果を検定した事例は少なく、その効果には個体群間差異があると考えられる。そのため、多発生地域において有効な薬剤を明らかにする必要がある。そこで大分県の個体群における、主要薬剤の殺虫効果および有効とされていた薬剤の感受性を調査する。

成果の内容・特徴

  • ネオニコチノイド系薬剤の中で、アセタミプリドでの死虫率は、24.1~57.4%と他の薬剤の死虫率と比べすべての個体群で低い(表2)。成虫に対するLC50値は、102.3~483.3ppm、感受性比(R/S)は6.7~31.6、幼虫では2個体群で97.0ppm、85.9ppm、感受性比は各4.3、3.8と感受性低下が認められる(表1)。
  • イミダクロプリド、チアクロプリドでは死虫率が約80%とやや低い個体群が認められる(表2)。イミダクロプリドの成虫に対する感受性比は4.1~11.8、チアクロプリドでは2.7~3.3と常用濃度で防除効果のある薬剤でも感受性低下が認められる(表1)。一方で、クロチアニジン、ジノテフランおよびニテンピラムでの殺虫効果は高い。
  • ネオニコチノイド系以外の薬剤では、エマメクチン安息香酸塩、スピノサド、トルフェンピラドおよびピリダベンで高い殺虫効果が認められる(表2)。一方で、クロルフェナピルおよびピメトロジンでは、一部で死虫率80%以下の個体群が認められる。フロニカミドでは幼虫に対して、高い殺虫効果が認められる。
  • 以上から、アセタミプリド(モスピラン水溶剤)は、オンシツコナジラミに対して感受性低下が認められる。そのため、本虫の防除には代替薬剤への切り替えを推奨する。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、大分県全域およびイチゴでオンシツコナジラミの多発生事例がある九州南部地域でも活用できる。
  • 本虫はイチゴ、トマトおよびキュウリにおいて多発生するので、これらの作物では黄色粘着トラップを設置し、発生初期および消長を把握する。
  • 本種は薬剤への感受性が低下しやすいので、恒常的な発生が認められる地域では、代替薬剤への切り替えだけでなく、生育期は防虫ネット被覆、収穫後では蒸し込みなど耕種的防除を含め、総合的に防除対策を取る必要がある。

具体的データ

表1

表2

(岡崎 真一郎)

その他

  • 研究課題名: 果菜類の新規コナジラミ(バイオタイプQ)等防除技術の開発
  • 予算区分: 国庫(一部委託)
  • 研究期間: 2006~2008年度
  • 研究担当者: 岡崎  真一郎、吉松 英明、上田 重文(九州沖縄農研機構)
  • 発表論文等: 岡崎ら(2010)九病虫研会報、56:83-87