九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

トウガンで発生した果実軟腐症の病原菌はErwinia carotovoraである

要約

沖縄県の出荷トウガンで発生した果実軟腐症の病原菌は、Erwinia carotovora である。本病害の症状は、収穫時の果実への有傷接種と圃場での成熟果接種により再現できる。

  • キーワード: トウガン、果実軟腐症、Erwinia carotovora
  • 担当: 沖縄農研セ・病虫管理技術開発班
  • 代表連絡先: Tel:098-840-8504
  • 区分: 九州沖縄農業・病害虫
  • 分類: 技術・参考

背景・ねらい

近年、沖縄県のトウガン栽培において、収穫時は健全であった果実が、出荷後に果実内部から液化して軟化・腐敗する病害が発生し問題となっている。腐敗部の検鏡観察により、細菌泥の噴出が確認されたことから、細菌による新病害の可能性が示唆されている。そこで、本病害の主病原菌の分離・同定と発病特性について検討する。

成果の内容・特徴

  • 症状は、はじめ果皮に水浸状の病斑が現れ、後に果実内部が溶解し果皮が破れて、腐敗した果肉汁が漏れ出す。常温では発病開始から3~5日程度で全体が腐敗する(図1)。普通寒天培地上で白色、円形、全縁、湿光を帯びたコロニーを形成する細菌が高率に分離され、分離菌の接種により果実および幼苗で腐敗症状が再現される(データ省略)。
  • 分離菌は、17項目の細菌学的性質試験より、グラム反応、フォスファターゼ活性およびエリスロマイシン感受性は陰性、5%NaClの生育、インドール産生およびジャガイモ塊茎腐敗は陽性、37℃で生育し、39℃では生育しない。細菌学的性質はインドール産生を除き、E. carotovora の対照菌株と一致する(表1)。E. carotovora のPCR検定の結果、種特異的遺伝子(434bp)が増幅される(図2)。以上の結果から、分離菌をE. carotovora と同定する。
  • トウガンのほ場接種試験の結果、収穫前の成熟果接種で貯蔵中の軟腐症が再現されることから、ほ場での病原菌の感染の可能性がある(表2)。雌花と幼果接種では接種直後の腐敗は発生するが、収穫後の果実軟腐症までは至らない。寄主範囲試験では5科17植物中、ハクサイ、レタス、カボチャ、スイカ、ナスなど4科16植物の広い範囲で病原性が認められ、ダイズのみ発病がみられない(データ省略)。

成果の活用面・留意点

  • E. carotovora にはインドール産生陽性系統がある(Cother and Blakeney, 1987; Cerkauskas and Brown,2001)。
  • 亜種については別途検討する必要がある。
  • 本病は、ほ場での発病はみられない。そのため、病名は「果実軟腐症」にとどめる。
  • 収穫時の果実の取り扱いは、傷を付けないように丁寧に行う。

具体的データ

図1

表1

図2

表2

(澤岻哲也)

その他

  • 研究課題名:トウガン果実腐敗の発生防止対策
  • 予算区分:県単
  • 研究期間: 2006~2008年度
  • 研究担当者:澤岻 哲也、河野 伸二、亀川 藍、宮平 奈央(九大農)、土屋 健一(九大農)