九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

琉球諸島におけるタバココナジラミの各バイオタイプの分布と寄主作物

要約

琉球諸島の作物種におけるタバココナジラミのバイオタイプを調査した結果、B、NauruおよびQが認められた。BとNauruは地域を問わず確認され、露地圃場に比べ施設圃場ではBの検出頻度が圧倒的に高かった。Qは稀で,沖縄島の2施設のみで確認された。

  • キーワード: Bemisia tabaci 、biotype、寄主、分布、沖縄
  • 担当: 沖縄農研セ・病虫管理技術開発班・害虫チーム
  • 代表連絡先: Tel:098-840-8504
  • 区分: 九州沖縄農業・病害虫
  • 分類: 研究・参考

背景・ねらい

タバココナジラミBemisia tabaci は多くの野菜類を加害する重要害虫で、寄主特異性や薬剤抵抗性などの違いによって多くのバイオタイプに分けられる(Pering, 2001)。亜熱帯地域である沖縄県では、バイオタイプNauruの存在は明らかにされているが(Ueda et al., 2009)、農業上重要なBやQなど他バイオタイプの地理的分布、相対頻度や寄主範囲は明らかでない。本研究では、主にPCR-RFLPを用い、琉球諸島の作物に寄生しているタバココナジラミの各バイオタイプの分布とその寄主作物を調査する。

成果の内容・特徴

  • 11島、150地点(施設95、露地55)から採集した1,277個体の成幼虫のバイオタイプは、Bが81.6%、Qが1.8%、Nauruが13.6%を占める(残り3.0%は判別できず)。
  • 表1に各バイオタイプの検出地点数を島毎に示す。Bは琉球諸島の全域に分布し、検出地点の占める割合(以下、検出率)は86.0%と高い。Qは沖縄島でのみ確認される(検出率1.3%)。Nauruは調査した全ての島から見つかるが、検出率は20.0%とBより低い。
  • 施設栽培圃場における各バイオタイプの検出率は、Bが100%、NauruとQが共に2.1%と、バイオタイプ間で違いがあるが、露地栽培圃場においては、Bが61.8%、Nauruが50.9%と同等の検出率となり、Qは確認されない(表1)。
  • 表2に幼虫の寄生が確認された作物種を示す。Bは、幼虫の寄生が確認された12科27種の全てで確認される。一方、Qはピーマンでのみ確認される。Nauruは4科6種の作物で確認され、サツマイモでの検出率が高い。
  • 琉球諸島におけるQの確認は、2009年1月の本調査によるものが初めてである。

成果の活用面・留意点

  • 琉球諸島の農作物に発生しているタバココナジラミの主要バイオタイプはBであることが初めて明らかになった。本種防除のための基礎情報として利用できる。
  • 薬剤抵抗性が発達しているとされるQが沖縄においても確認された。特にピーマンにおいては、Qであることも視野にいれた薬剤の選定が必要である。
  • Nauruの害虫としての危険性は不明であるため、薬剤感受性試験等が必要である。
  • 島間および施設栽培圃場と露地栽培圃場のバイオタイプ構成の違いについては、調査地点の少ない島でのデータを増やし、さらに調査が必要である。

具体的データ

表1

表2

(貴島 圭介、大野 豪、喜久村 智子)

その他

  • 研究課題名: 亜熱帯地域における難防除微小害虫類の種構成の解明
  • 予算区分: 国庫1/2(環境にやさしい病害虫管理技術確立事業)
  • 研究期間: 2006~2009年
  • 研究担当者: 貴島 圭介(沖縄農研セ)、上田 重文(九州沖縄農研)、大野 豪(沖縄農研セ)、喜久村 智子(沖縄農研セ)、上宮 健吉(久留米大)、大石 毅(沖縄農研セ宮古島)
  • 発表論文等: 貴島ら(2011)応動昆、55(1):9-17