要約
福岡県の促成イチゴにおいて、本ぽにおける化学農薬の総使用回数を県基準の1/2に削減できる本IPMシステムは、生物的防除資材を核とし、栽培期間を通して主要病害虫を低密度に抑える。しかも、モニタリング技術を必要としないため現場での実施が容易である。
- キーワード: イチゴ、IPM、カブリダニ、バンカー法、拮抗微生物、ダクト内投入法
- 担当: 福岡農総試・病害虫部・病害虫チーム
- 代表連絡先: 電話092-924-2938
- 区分: 九州沖縄農業・病害虫
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
福岡県では、減農薬減化学肥料栽培認証制度に対応した化学農薬の総使用回数を県基準の1/2以下に削減できる促成イチゴのIPMシステムの構築が望まれている。そこで、まずは本ぽにおいて、化学農薬の総使用回数を県基準の1/2以下に削減できる生物的防除資材を基幹としたIPMシステムを構築する。
成果の内容・特徴
- 構築したIPMシステムは、病害虫のモニタリング技術を必要としない簡便な技術であり、なおかつ、本ぽでの化学農薬の使用回数を福岡県基準(32回)の1/2以下に削減できる。また、促成イチゴ栽培の作型や栽培方式を問わず実施することができる(表1)。
- ハダニ類とアブラムシ類に対しては、天敵と選択的薬剤を組み合わせたスケジュール防除体系により、栽培期間を通して害虫を低密度に抑えることができる。また、主要害虫に対する作業労賃を含めた防除コストを20%削減することができる(データ略)。
- うどんこ病と灰色かび病に対しては、防除に拮抗微生物剤を利用することにより、化学農薬の使用時期が3月中旬以降となり、散布回数が大幅に削減できる。また、ボトキラー水和剤の暖房用ダクト内投入法は散布の手間が省け作業労働時間を45%削減できる(データ略)。
- IPMシステムの防除コストは、県基準とほぼ同等である(表1)。
成果の活用面・留意点
- 本体系の有効性は、八女市の現地圃場(2310m2、6連棟ハウス)にて2か年間実証試験を行い、病害虫防除効果を確認している。主要な試験データは福岡県庁ホームページの「福岡県病害虫・雑草防除の手引き(http://www.jppn.ne.jp/fukuoka/tebiki/toppu.html)」に掲載している。
- 本体系は、福岡県庁ホームページの「福岡県病害虫・雑草防除の手引き」に掲載し、普及指導員、JA営農指導員や生産者の技術資料とする。
- 病害虫の初期密度が高いと、十分な防除効果が得られないため、育苗期の防除を徹底し、病害虫の寄生・発病が見られない健全苗を定植する。また、9月以降の育苗後期には、天敵に影響のある有機リン、カーバメート系、合成ピレスロイド系及びピラゾール系の薬剤使用を控える。
- 定植後、うどんこ病が発生した場合、タフパールWPを使用する前に化学農薬で防除する。
- 害虫密度が高くなった場合は、天敵に影響のない選択的薬剤で防除する。また、同一系統薬剤の連用を必ず避ける。
具体的データ
その他
- 研究課題名: 暖地の施設イチゴにおける病害虫総合管理システムの体系化と実証
- 予算区分: 委託プロ(生物機能)
- 研究期間: 2004~2008年度
- 研究担当者: 柳田裕紹、森田茂樹、石井貴明、浦広幸、嶽本弘之