九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

露地ビワにおけるナシマルカイガラムシは有効積算温度で発生予測できる

要約

露地ビワでのナシマルカイガラムシ第1世代歩行幼虫の発生初期、同発生ピークは有効積算温度(新井ら、2008)に適合し、第1世代歩行幼虫発生ピークを予測することが可能である。 

  • キーワード: ビワ、ナシマルカイガラムシ、有効積算温度
  • 担当: 長崎農技セ・果樹・カンキツ研究室
  • 代表連絡先: 電話0957-55-8740
  • 区分: 九州沖縄農業・病害虫
  • 分類: 技術・参考  

背景・ねらい

ビワの重要害虫であるナシマルカイガラムシ発生消長については温州ミカン等では過去に調査報告されている(松浦ら、1967)が、ビワの調査事例は少ない。リンゴにおけるナシマルカイガラムシの発生消長について新井ら(2008)が3月1日を起点に発育零点10.5°C、発育上限温度32.2°Cとして有効積算温度を報告している。そこで、露地ビワにおけるナシマルカイガラムシ歩行幼虫の発生消長とフェロモンによる雄成虫の誘殺調査を行ない、新井ら(2008)のモデルと比較し、モデルの適合性を検証した。 

成果の内容・特徴

  • 露地ビワでのナシマルカイガラムシの第1世代歩行幼虫発生初期、同発生ピークおよび第2世代歩行幼虫発生ピークはそれぞれ5月中~下旬、5月下旬~6月上旬、7月中~下旬である。一方、本種の越冬世代雄成虫発生初期、同発生ピークおよび第1世代雄成虫発生ピークはそれぞれ4月中旬、4月下旬~5月上旬、6月中旬~7月上旬頃である(表1、表2)。
  • 第1世代歩行幼虫発生ピークは、新井ら(2008)の有効積算温度(約429日度:3月1日を起点、発育零点10.5°C、発育停止温度を32.2°C)を利用した本種発生時期予測とよく適合する(表1、表2)。
  • 越冬世代雄成虫発生初期以外の発生については、調査毎の変動が大きく適合性は高くない。
  • 適合性の高い越冬世代雄成虫初発生期から第1世代歩行幼虫の発生ピークを予測することも可能性がある(雄成虫発生初期から約40日後)。

成果の活用面・留意点

  • 有効積算温度を利用し歩行幼虫発生ピークを予測することが可能となり、防除適期の把握に活用することができる。
  • 防除適期に最も関係がある第1世代歩行幼虫発生ピークまでの有効積算温度は約429日度で、5月下旬~6月上旬にあたる。

具体的データ

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表2

参考

 

その他

  • 研究課題名: 果樹ウイルス抵抗性健全母樹の育成と特殊病害虫調査(ビワの重要病害虫の効率的管理技術の実証)
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2005~2008年度
  • 研究担当者: 宮崎俊英、寺本健