要約
ナシ黒星病菌の子のう胞子は、秋型病斑罹病落葉上で3月上旬頃から形成され始め、4月上旬には高率に形成されている。子のう胞子は4月の降雨後に多く飛散し、伝染源となる。
- キーワード: ナシ、黒星病、子のう胞子、飛散消長
- 担当: 大分農林水産研安全
- 代表連絡先: Tel:0978-37-1893
- 区分: 九州沖縄農業・病害虫
- 分類: 技術・参考
背景・ねらい
ナシ黒星病の第一次伝染源には前年枝の芽りん片に形成される分生子(不完全世代)と罹病落葉上に形成される子のう胞子(完全世代)がある。本州のナシ産地では子のう胞子による伝染が重要視されているが、西南暖地の九州では子のう胞子形成について不明な点が多い。2005年に本県における子のう胞子形成を確認したことにより、秋型病斑を形成した罹病落葉についても伝染源として重要であることが示唆されている。そこで、これまで九州地域において不明であった罹病落葉上の子のう胞子形成状況と飛散消長を明らかにする。
成果の内容・特徴
- ナシ黒星病秋型病斑罹病落葉上での子のう胞子は3月上旬から形成され始め、4月上旬には高率に形成されている。なお、罹病落葉を採取・放置した地点および品種間に大きな差は認められない(表1)。
- ナシ黒星病菌の子のう胞子の飛散は、2007年は調査を開始した3月下旬に、2008年は3月中旬に確認され、ピークは2007年は4月中旬、2008年は4月上旬であり、両年とも5月以降はほとんど確認されない。また、飛散は降雨後に確認される。なお、千葉県において子のう胞子は3月下旬~4月上旬に飛散を開始し、ピークは4月中下旬とされており、これと比較してやや早い傾向である(図1A、図1B)。
- 罹病落葉を敷き詰めた区と無設置区にナシ苗木を設置し、発病状況を調査したところ、敷き詰めた区の方が明らかに発病が早く、罹病落葉(子のう胞子)による感染が示唆される(データ略)。
成果の活用面・留意点
- 伝染源を減らすための防除対策であるナシ黒星病秋型病斑を形成させないための秋期防除と罹病落葉処理(園地外持ち出し等)を現地に一層普及するための基礎資料として活用できる。
具体的データ
その他
- 研究課題名: 安全・安心な「なし」づくりのための総合防除体系の確立
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 2006~2008年度