九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

日本国内産ジャガイモYウイルス塊茎えそ分離株集団の遺伝構造

要約

日本国内(北海道、長野県、長崎県、鹿児島県および沖縄県)産ジャガイモYウイルス塊茎えそ分離株(PVYNTN)集団は組換え体ではなく、遺伝構造は比較的均一である。

  • キーワード: ジャガイモ、ジャガイモYウイルス、PVY、塊茎えそ病、遺伝構造
  • 担当: 長崎総農林試愛野・環境科、長崎総農林試、佐賀大学、北海道農研、キリンホールディングス(株)
  • 代表連絡先: Tel:0957-36-0043
  • 区分: 九州沖縄農業・病害虫
  • 分類: 研究・参考

背景・ねらい

ジャガイモ塊茎えそ病は、ジャガイモYウイルスの塊茎えそ分離株(以下、PVYNTN)が病原体であり、国内のジャガイモ産地で発生が確認されている。また、本ウイルスはヨーロッパや北米をはじめ世界各地で発生が確認されており、性状解明を目的としたウイルスの遺伝子解析が進められている。そこで、国内の広い地域から採集した分離株の全ゲノム構造について塩基配列を決定し、国内のPVYNTN集団の遺伝構造を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 国内の5地域(北海道、長野県、長崎県、鹿児島県および沖縄県)から採集したPVYNTN、海外産PVYO、PVYN、PVYC、PVYNTNおよびその他のPVY合計51分離株の全長ゲノムの組換え部位解析により、31分離株が組換え体であり、国内産PVYNTNを含めた20分離株は組換え体ではない(表1)。
  • 組換え体ではない20分離株は、分子系統解析により3つのグループと2つのサブグループを形成する。国内産PVYNTNは、北米産PVY分離株(Tu660、RRA-1)とともにサブグループを形成する(図1)。
  • 以上より、国内産PVYNTN集団の遺伝構造は、比較的均一である(表1、図1)。

成果の活用面・留意点

  • 本情報によるPVYNTNの遺伝子情報は、ジャガイモ生産現場におけるPVYNTNの遺伝子診断法の開発に利用することができる。
  • 国内産PVYNTN5分離株の全塩基配列は、DDBJに登録している(北海道分離株NTNHO90:AB331517、長野分離株NTNNNO99:AB331518、長崎分離株NTND6:AB331515、鹿児島分離株NTNON92:AB331519、沖縄分離株NTNOK105:AB331516)。
  • 本情報はPVYのなかでも塊茎えそ病を起こすPVYNTNを対象としているが、国内にはPVYNTN以外の普通系統(PVYO)やえそ系統(PVYN)も発生しているため、今後これらの系統を含めたPVY全体の遺伝構造を明らかにする必要がある。
  • 海外のPVYNTNには、本情報で示すように組換え体が存在し、日本のPVYNTNとは異なる遺伝構造を有することから、このようなPVYNTNが国内へ侵入した場合、国内のジャガイモ品種で新たな被害が発生する可能性があり、警戒が必要である。

具体的データ

表1

図1 

その他

  • 研究課題名: ウイルス病防除のためのワクチン保有マイクロチューバーの開発
  • 予算区分: 実用技術開発事業
  • 研究期間: 2006~2008年度