九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

乳酸発酵によりGABAを強化した黒糖

要約

サトウキビ搾汁液に乳酸菌を接種して乳酸発酵させると、サトウキビ搾汁液中のグルタミン酸がGABAに変換される。乳酸菌Lactobacillus brevis NBRC12520によってGABAが増強されたサトウキビ搾汁液を用いて製糖すると、GABAが増強された黒糖が得られる。

  • キーワード: サトウキビ、乳酸菌、乳酸発酵、グルタミン酸、GABA、黒糖
  • 担当: 沖縄県農研・農業システム開発班 
  • 代表連絡先: Tel:098-840-8502
  • 区分: 九州沖縄農業・フードシステム
  • 分類: 技術・参考

背景・ねらい

沖縄県の特産物である黒糖はミネラル類を多く含み、フェノール性抗酸化成分やポリフェノールに由来する動脈硬化抑制作用等、多種の機能性が報告されるなど、その機能性が注目されている。その原料であるサトウキビには血圧上昇抑制作用や精神安定作用が報告されているγ-アミノ酪酸(GABA)が含有されているが、近年、乳酸菌にGABAを生産する菌株が報告されている。そこで、サトウキビ搾汁液(以下、蔗汁と略する)を乳酸発酵させてGABAを増強した黒糖の製造方法を開発し、黒糖の高付加価値化を図る。

成果の内容・特徴

  • 蔗汁を1分間沸騰させたのちに冷却、遠心分離して不溶物を除去し、さらにオートクレーブ滅菌した後に乳酸菌を接種して乳酸発酵させることにより、蔗汁中のグルタミン酸をGABAに変換することができる。乳酸菌はGABA生産量からLactobacillus brevis NBRC12520株が適する(表1)。
  • 乳酸発酵に用いる乳酸菌スターターにはGYP改変培地(酵母エキス0.5%、ペプトン0.5%、グルコース0.5%、ラクトース0.2%、ツィーン(80)0.05%、硫酸マグネシウム七水和物0.1%、pH6.5~6.8)を用い、蔗汁に乳酸菌スターターを10%以上添加して乳酸発酵させると、効率良くGABAが生産される(表2)。また、乳酸発酵の培養温度は30°C以上、培養時間は24時間以上で効率良くGABAを生産する。
  • Lb. brevis NBRC12520株をGYP改変培地で培養してスターターとし、蔗汁に10%添加して30°Cで24時間乳酸発酵させた蔗汁を用いて製糖すると、GABAが約1.7倍に増強された黒糖を製造できる(表3)。乳酸発酵によるショ糖の消耗はわずかで、乳酸および酢酸の含有量が増加する。また、ポリフェノール含有量および抗酸化能は乳酸発酵による影響を受けない。そのほか、乳酸発酵によって黒糖の色相が1.03から2.05に増加し、GABA増強黒糖は赤みをおびた色合いとなる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は黒糖の加工利用に関する参考資料であり、製造を希望する業者に対する技術指導の資とする。
  • 黒糖のGABAを更に増強するためには、乳酸発酵にグルタミン酸を添加する方法を検討する必要がある。

具体的データ

表1

表2

表3

 

その他

  • 研究課題名: 高付加価値黒糖製造技術の開発及び黒糖成分の比較
  • 予算区分: 受託(沖縄県産黒糖機能性等科学的分析評価事業)
  • 研究期間: 2005~2007年度