九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

「さやあかね」由来ジャガイモ疫病真性抵抗性遺伝子R2判別用プライマー

要約

プライマーセット(R2SP-S7・R2SP-A9)を使ったPCRにより、「さやあかね」および「北海56号」由来のジャガイモ疫病真性抵抗性遺伝子R2の有無が判別できる。

  • キーワード: ジャガイモ、バレイショ、疫病、抵抗性、PCR、プライマー、R2
  • 担当: 長崎農技セ・農産園芸研究部門・花き・生物工学研究室
  • 代表連絡先: Tel:(代表)0957-26-3330、(直通)0957-26-4326
  • 区分: 九州沖縄農業・畑作
  • 分類: 研究・参考

背景・ねらい

暖地春作バレイショ栽培では、疫病による収量低下を防ぐため殺菌剤の散布が複数回行われている。このため、バレイショの減農薬栽培や環境保全型農業を推進する上で抵抗性品種の育成は不可欠である。育種現場では、疫病菌の病原性レースに左右されない圃場抵抗性が重視されており、圃場抵抗性を正確に評価するためには真性抵抗性遺伝子型を把握することが重要である。しかしながら、海外からの判別品種の入手は検疫などの理由で容易ではなく、また判別用の疫病菌レースも保存されていないため、遺伝子型の特定は困難であり、真性抵抗性遺伝子型を判別するDNAマーカーの開発が必要である。
本研究では、「北海56号」および「さやあかね」由来のジャガイモ疫病真性抵抗性遺伝子R2を判別するためのプライマーを開発する。

成果の内容・特徴

  • プライマーセット(R2SP-S7:5'-TACTAACCTTTTCCTAGATG-3'/R2SP-A9:5'-AGAACTTTCTCACAGCTTTT-3')で検出されるDNAマーカー(R2-800: 約800bp)は、Solanum tuberosum ssp. andigenaの系統「W553-4」に由来し「さやあかね」が持つジャガイモ疫病真性抵抗性遺伝子R2adg、およびS. stoloniferumに由来し「北海56号」が持つR2stoに連鎖する(図1、図2)。抵抗性品
  • 種「さやあかね」と罹病性品種「農林1号」とのF1雑種、および抵抗性系統「北海56号」と罹病性品種「Norchip」とのF1雑種において、R2-800の有無と疫病菌03001株(レース1,3,4)を用いた接種検定における抵抗性の有無はそれぞれ70.4%および77.8%の精度で一致することから、本プライマーはR2adgあるいはR2stoに由来する疫病抵抗性の判別に有効である(図2)。
  • 疫病抵抗性の品種・系統のうち「インカの星」「さやあかね」「花標津」「北海56号」「I-1039」「V-2」「W553-4」「WB88055-8」の8品種・系統からR2-800が検出される(図1、表1)。

成果の活用面・留意点

  • 開発したプライマーセット、および真性抵抗性遺伝子R1を判別するプライマーセット(76-2sf2・76-2SR)を使うことで、R1R2遺伝子を持つ交配親の選定や雑種個体のスクリーニングに利用できる。
  • 「さやあかね」や「北海56号」を交配母本として、ジャガイモシストセンチュウ、ジャガイモXウイルス、ジャガイモYウイルス抵抗性を持つ個体との交配でDNAマーカーを用いた効率的な複合抵抗性品種の育成が期待できる。
  • S. emissumに由来するR2遺伝子を持つと推定される品種・系統には利用できない(表1)。
  • 接種検定における疫病抵抗性は、遊走子のう形成率20%以下を抵抗性と判別している。

具体的データ

図1

図2

表1

(長崎農技セ)

その他

  • 研究課題名: バレイショ疫病抵抗性育種素材の育成
  • 予算区分: 経常研究(県単)
  • 研究期間: 2004~2008年度
  • 研究担当者: 大林 憲吾、中田(田島) 奈津子、茶谷 正孝
  • 発表論文等: 大林ら「R2adg及びR2sto遺伝子に連鎖するDNAマーカーを用いたジャガイモ疫病抵抗性検定法」特開2010-220571
                      大林ら(2008)園芸学研究、7(別2): 201