要約
バレイショ系統「長生1号」および「長生2号」は、疫病無防除栽培において茎葉が疫病抵抗性を示し、塊茎腐敗も少なく、交配親として利用可能である。
- キーワード:ジャガイモ、バレイショ、抵抗性、ジャガイモ疫病、塊茎腐敗
- 担当:長崎農技セ・農産園芸研究部門・花き・生物工学研究室
- 代表連絡先: Tel:(代表)0957-26-3330、(直通)0957-26-4326
- 区分:九州沖縄農業・畑作
- 分類:研究・普及
背景・ねらい
春作バレイショ栽培では、疫病による収量低下や塊茎腐敗を防ぐため殺菌剤の散布が複数回行われている。西南暖地向け品種はいずれも疫病に弱く、バレイショの減農薬栽培や環境保全型農業を推進する上で抵抗性品種の育成は不可欠である。そのため、茎葉、塊茎ともに疫病に対して抵抗性を持つ優良系統を育成し、育種素材化を図る。
成果の内容・特徴
- 「長生1号」は、2004年春作において疫病罹病性品種「メークイン」を母、疫病抵抗性を持つSolanum tuberosum ssp. andigena の系統「W553-4」を父として交配し、2005年に無菌培養し、「04-4-19」として選抜してきた系統である(表1、写真1)。
- 「長生2号」は、2004年春作において「W553-4」に由来する疫病抵抗性を持つ品種「花標津」を母、疫病圃場抵抗性品種「Atzimba」を父として交配し、2005年に無菌培養し、「04-2-79」として選抜してきた系統である(表1、写真1)。
- 疫病菌03001株(レース1,3,4、メタラキシル耐性)を用いた噴霧接種検定において、「長生1号」および「長生2号」の疫病抵抗性は抵抗性を持つ交配親と同程度以上である(表1)。
- 疫病無防除栽培において、「長生1号」および「長生2号」の茎葉の疫病抵抗性は「ニシユタカ」より強く、塊茎腐敗抵抗性は「ニシユタカ」と同程度である。(表1)。
- 「長生1号」からSolanum tuberosum ssp. andigena 系統「W553-4」由来の疫病真性抵抗性遺伝子R2 に連鎖するDNAマーカーが検出された(表1)。
- 「長生1号」および「長生2号」は春作・秋作ともに開花し(表2)、交配親として利用可能である(表3)。
成果の活用面・留意点
- 「長生2号」ではDNAマーカーが検出されなかったことから「Atzimba」由来の疫病抵抗性を持つことが考えられ、「長生1号」および「長生2号」は、それぞれ異なる疫病抵抗性遺伝子給源を持つ交配親として活用できる。
- 育種に利用するにあたって選抜系統の収量性、食味の評価並びに雑種後代における疫病抵抗性個体の出現率調査が必要である。
- 軟腐病、青枯病による塊茎腐敗が発生する。
具体的データ
その他
- 研究課題名:バレイショ疫病抵抗性育種素材の育成
- 予算区分:経常研究(県単)
- 研究期間:2004~2008年度
- 研究担当者:大林憲吾、中田奈津子、茶谷正孝、小村国則
- 発表論文等:1) 田島(中田)奈津子ら(2006)九農研、69:32
2) 田島(中田)奈津子ら(2006)九農研、69:33
3) 茶谷正孝、小村国則(2005)九農研、67:23