九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

根域制限シートマルチ栽培による温州ミカンの品質と収益性向上効果の現地実証

要約

産地における根域制限シートマルチ栽培された温州ミカンの出荷果実のブランド率は、極早生で7割以上、早生で9割以上と高い。販売の金額は慣行シートマルチ栽培と比較して2倍ほど多く、農業所得では6倍ほど多くなり、結実4年目からは利益となる。

  • キーワード: 温州ミカン、根域制限栽培、シートマルチ栽培、収益性、農業所得
  • 担当: 佐賀果樹試・常緑果樹研究担当
  • 代表連絡先: Tel:0952-73-2275
  • 区分: 九州沖縄農業・果樹
  • 分類: 技術・普及

背景・ねらい

佐賀県では、温州ミカンの連年安定した品質向上を図るため、県内の鹿島地区、唐津地区を中心に温州ミカンの根域制限シートマルチ栽培が導入されている。ここでは、産地における根域制限栽培された温州ミカンの果実品質と収益性について慣行シートマルチ栽培と比較し、根域制限シートマルチ栽培の品質向上効果と経営的な導入効果を明らかとする。

成果の内容・特徴

  • 本成果の根域制限シートマルチ栽培の圃場は、防根シート上に有機物等を混和した培土を盛土して畝を形成し、畝の両端には土止めのブロックを配置している。シートマルチ資材は巻上げ用直管を利用して敷設し、灌水資材は樹冠下に設置している。根域制限シートマルチ栽培の10a当たり植栽本数は、180本ほどである。
  • 根域制限シートマルチ栽培の果実品質は、極早生、早生ともに慣行シートマルチ栽培より糖度が高く、出荷果実のブランド率も極早生で7割以上、早生で9割以上と高い(表1)。
  • 根域制限シートマルチ栽培の出荷果実の販売の単価は、極早生、早生ともに慣行シートマルチ栽培より高く、販売の金額では2倍ほどとなり、手取の単価および金額も高い(表2)。
  • 極早生での根域制限シートマルチ栽培の農業所得は、慣行シートマルチ栽培の6倍ほど多くなり、結実4年目からは利益となる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 根域制限シートマルチ栽培の品質向上効果を安定して発揮させるためには、栽培管理面では夏秋期に適正な水管理を行うことが特に重要となる。
  • 根域制限シートマルチ栽培の果実の販売方法は、極早生では2010年より、早生では2008年より通常の露地栽培果実と区分してブランドが設けられて販売されている。
  • 佐賀県での根域制限シートマルチ栽培の導入にあたっては補助事業が利用可能であり、農家の自己負担費用は導入費用の6割程度であるため、実際には結実3年目から利益となることが見込まれる。

具体的データ

表1

表2

表3

(貝原 洋平)

その他

  • 研究課題名: 温暖化に対応したカンキツの総合的な高品質安定生産技術の確立
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2009~2015年度
  • 研究担当者: 貝原 洋平、新堂 高広