要約
渋皮剥皮性が優れるニホングリ「ぽろたん」で加熱後、剥皮作業に時間がかからず、果実の形をきれいに残すことができる最適な傷の入れ方は、深さ3.5mm、範囲270度である。
- キーワード: クリ、ぽろたん、剥皮、傷入れ方法、加熱
- 担当: 熊本県農研セ・果樹研・落葉果樹研究室
- 代表連絡先: Tel:0964-32-1723
- 区分: 九州沖縄農業・果樹
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
「ぽろたん」は加熱することで渋皮が容易に剥皮出来る画期的なニホングリ品種であるが、オーブンや電子レンジなどによって急速に加熱する場合は破裂の危険があるため、前もって果実に果肉に達する程度の傷を入れておく必要がある。そこで、加熱後に短時間で剥皮作業ができる傷の入れ方を開発することにより、加工現場のコスト削減を図り、「ぽろたん」果実の需要を拡大する。
成果の内容・特徴
- 図1の線上で果実を切断し、果実表面から果肉までの距離(鬼皮と渋皮の厚さ合計)を測定すると、97.5%が3.5mm以下である(図2)。また、傷入れ範囲を同じにした場合、深さが2mmと3.5mmでは後者の方が渋皮の切れ残りが極めて少ないため概ね短時間で加熱後の剥皮が可能である(図3)。また、傷が深すぎないため剥皮後の外観が優れる。
- 傷入れ角度(図1のθ)を90~360度に設定して、オーブン180°Cで15分加熱し、加熱終了後から剥皮開始まで1分、5分、10分間常温においた後の剥皮時間は、他の角度が時間経過とともに剥けにくくなるのに対し、270度の場合は安定して剥皮時間が短い(データ略)。
- 傷入れ角度を180度、270度、360度に設定し、オーブン、電子レンジ、ブランチング(短時間ゆでる処理)での加熱後の剥皮時間を検討したところ、加熱方法に関わらず、270度が最も短い(図4)。
成果の活用面・留意点
- この傷入れ方法は、加工産業において、果実の形状および表面の凹凸を残す場合を想定しており、クリの扱いに慣れていないと難しい。家庭などでの傷入れは、安全に十分留意して調理者の可能な方法で行うこと。
- ブランチングは果肉表面のみ火が通っている状態であり、中は生であるため、そのままでは食せないが、再加熱を要する加工産業での剥皮方法として適する。
- 電子レンジで庫内に多くの果実を入れたり、ブランチングで十分な湯温を保たない等加熱が不十分だと、傷入れ方法に関わらず剥皮が困難になる。
具体的データ
(岩谷 章生)
その他
- 研究課題名: 渋皮が剥けやすいニホングリ「ぽろたん」の生産・利用技術の確立
- 予算区分: 実用技術開発事業
- 研究期間: 2008~2010年度
- 研究担当者: 岩谷 章生、大崎 伸一、岡田 治
- 発表論文等: 岩谷 章生ら(2008)園学研、8(別1):457