要約
「大分果研3号」は「アンコール」に「吉田ポンカン」を交配して育成した晩生カンキツで、カンキツの出荷量が少ない4~5月に出荷販売が可能である。果実は糖酸ともに高く、バランスのよい濃厚な食味とアンコール香が特徴である。
- キーワード: カンキツ、新品種、晩生
- 担当: 大分農林水産研指・果樹カボス・中晩柑チーム
- 代表連絡先: Tel:0972-82-2837
- 区分: 九州沖縄農業・果樹
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
カンキツの出荷量が少なくなる4~5月頃に出荷販売が可能で、かつ糖度が高く品質の優れたカンキツ品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「大分果研3号」は晩生マンダリン「アンコール」に高しょう系ポンカン「吉田ポンカン」を交配して育成した晩生カンキツである。2009年3月に種苗法に基づく品種登録申請を行い、2010年10月13日に品種登録された(登録番号:19957号)。
- 樹姿はやや直立で、樹勢は強である。枝梢の密度は密、太さは細、長さは中であり、トゲの発生は見られない(表1)。これまでの調査期間における着花は良好で、隔年結果性は低いものと思われる。
- 果形は扁平(果形指数146)、果実の大きさは150g程度である。果皮色は濃橙(カラーチャート9.0)、果皮の厚さは2.3mmと薄い。果面の粗滑は中、剥皮性は易、種子は数個入る程度である(多胚)。じょうのう膜は薄く、袋ごと食することが可能である。香気はアンコールに類似する(表2)。
- 糖酸ともに高く、バランスのよい濃厚な食味であり、収穫期は糖度(Brix)が14程度、クエン酸含量は1.3%以下になる2月以降と考えられる(表3)。ただし、2月以降は浮皮が発生する可能性が高いため、注意が必要である。
- 2月下旬に収穫した果実を低温貯蔵すると、5月下旬には糖度(Brix)が16程度、クエン酸含量は1%以下となり、食味が良好であることから、5月の出荷販売が可能と考えられる(表3)。
成果の活用面・留意点
- 露地栽培でカンキツの端境期に出荷販売が可能な品種として活用できる。
- 当面は大分県内のみで普及を図る。
- 気象条件によっては、果実肥大期(9月頃)の裂果と1月下旬頃から浮皮が発生することがある。
- 最適な貯蔵方法は現在検討中である。
具体的データ
(髙盛 俊介)
その他
- 研究課題名: 果樹のオリジナル品種の育成
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 1986~2010年
- 研究担当者: 髙盛 俊介、若月 洋、小田 眞男、吉澤栄一、川野 信壽、北崎 佳範、小原 誠、三股 正
- 発表論文等: 大分県農林水産研究指導センター研究報告第1号