九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

断根刃を利用した根群制御処理によるウンシュウミカン果実品質向上効果

要約

断根刃を装着した油圧ショベルを用い、4月下旬~5月上旬の年1回、ウンシュウミカンの畝部両側の断根を行うと、シートマルチ栽培と同等の高品質果実が生産できる。

  • キーワード: ウンシュウミカン、断根刃、断根処理
  • 担当: 長崎農技セ・果樹・カンキツ研究室
  • 代表連絡先: Tel:0957-55-8740
  • 区分: 九州沖縄農業・果樹
  • 分類: 技術・参考

背景・ねらい

ウンシュウミカンのシートマルチ栽培は糖度を向上する技術として普及しているが、炎天下の被覆作業であり、作業者の労働負担が大きいことが課題である。そこで、シートマルチ栽培に代わる高品質ウンシュウミカン栽培法として、油圧ショベルにナイフ状の断根刃を装着し断根する根域制御栽培法の検討を行う。

成果の内容・特徴

  • (独)農研機構生物系特定産業技術研究支援センターが開発した、アーム部が45°傾斜する油圧ショベルに、ナイフ状の断根刃を取り付けたものを使用し、樹の主幹から1m離れた高畝両側の内側(約45度)深さ40cmを断根処理した(写真1)。
  • 糖度は、断根処理を行うと無処理に比べ有意に高くなり、シートマルチと同等となる(図1)。
  • 酸含量は、断根処理を行ってもシートマルチ及び無処理と同等である(図2)。
  • 1果平均重は、断根処理を行っても、シートマルチとほぼ同等である(データ略)。
  • 1樹あたり収量は、断根処理を行うことでシートマルチと有意差は見られないが、やや減少する傾向がある(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 「橋川温州」16年生~19年生における試験結果である。
  • 試験を実施した土壌は、細粒赤色土(母材は、玄武岩と安山岩の混成)である。
  • 断根処理は、毎年1回4月下旬~5月上旬に実施したが、処理程度によっては樹勢等に影響することがあるので、樹勢低下が見られた場合、断根処理を中止する。
  • 断根処理に要する主な経費は、断根刃作成費10~20万円、油圧ショベルリース代5千円~2万円/日、シートマルチは、透湿性シート12万円/10aである。
  • 作業にかかる時間は、断根で1~4時間/10a、シートマルチ作業で9時間/10a(長崎県農林業基準技術)である。

具体的データ

写真1

図1

図2

図3

(荒牧 貞幸)

その他

  • 研究課題名: 新資材新栽培法による温州ミカン品質向上技術の開発
                        気候温暖化に対応したカンキツ栽培技術の開発
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2004~2008年度、2009~2013年度
  • 研究担当者: 永田 浩久、荒牧 貞幸、井手 勉、徳嶋 知則