要約
ホウ素資材の土壌への連年施用園で発生した樹勢低下、葉周縁の褐変および落葉等の症状はホウ素過剰症である。ホウ砂溶液の葉面散布のみでも土壌中ホウ素含量が高くなる事例があり、定期的に土壌分析を行うことで土壌中のホウ素含量を監視する必要がある。
- キーワード: マンゴー、過剰障害、ホウ素
- 担当: 鹿児島農総セ・果樹部・環境研究室
- 代表連絡先: Tel:0994-32-0179
- 区分: 九州沖縄農業・果樹
- 分類: 技術・参考
背景・ねらい
過去にマンゴー果実の背部がくぼみ、商品性が大きく損なわれる障害に対して、花穂へのホウ砂溶液の散布が有効であることを明らかにした。しかし、ホウ素は適正範囲域が狭い養分とされ、過剰症が懸念される。生産現場においてホウ素過剰が疑われる症状が発生したため、症状の特徴、資材の施用状況を調査するとともに、植物体、土壌の分析値を基にその原因を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 障害発生園では、樹勢低下、下位葉周縁の褐変および落葉等の症状が園内で散見され、障害の甚だしい樹では極端な樹勢低下、上位葉の褐変と甚だしい落葉が見られる(図1、表1)。
- 障害が発生した樹の葉中ホウ素含量は、健全樹に比べて明らかに高い。他の無機成分については一定の傾向が認められない(表1、データ略)。
- 土壌中のホウ素含量はホウ素の累積投入量が多くなるに伴い高くなる(図3)。
- 障害発生園ではホウ素資材の土壌への連年施用を行っており、土壌中ホウ素含量が健全園に比べて明らかに高い。ホウ砂溶液の葉面散布のみでも散布量、回数が多い場合には、土壌中のホウ素含量が高くなる事例(健全園A)が見られる(表1、図3)。
- 本障害は、ポット試験によるホウ砂100g/m2施用レベルのホウ素過剰条件下で再現できる(図2)。
成果の活用面・留意点
- 果実背部がくぼむ障害に対するホウ砂溶液散布は、花穂への1回散布を遵守し、ほ場へのホウ素の散布量を最小限にするよう努める。
- ホウ素過剰症を回避するために、定期的に土壌分析を行うことで土壌中のホウ素含量を監視する必要がある。土壌中熱水可溶性ホウ素含量の目標値を2ppm以下とし、それを超える場合はホウ素資材の施用(葉面散布、花穂散布、土壌施用)を中止する。
- ホウ素過剰症は土壌pHの低下に伴い可能性が増すため、土壌pHを適正範囲(5.5~6.5)に収める必要がある。
- 調査した園地は、ハウス栽培であり、ホウ素の降雨による溶脱が露地栽培に比べて起こり難い環境下である。
具体的データ
(上之薗 茂)
その他
- 研究課題名:環境にやさしい安心・安全な果物づくり技術の確立
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 2009~2010年度
- 研究担当者: 上之薗 茂、鳥越 博明