九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

沖縄型有材心土破砕機の開発

要約

沖縄の劣悪な土壌物理性を改善するため、心土破砕と同時に下層土に資材を投入することができる沖縄型の有材心土破砕機を開発した。当機器により深さ25cmから60cmの間に、巾6cmで資材を均一に投入埋設することが可能である。これにより固く締まった下層土の通気性、透水性の改善が期待できる。

  • キーワード: 土壌物理性改善、沖縄型有材心土破砕機
  • 担当: 沖縄県農業研究センター・土壌環境班
  • 代表連絡先: Tel:098-840-8503
  • 区分: 九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
  • 分類: 技術・参考

背景・ねらい

沖縄県の土壌は粘土分が多く踏圧等により固く締まりやすい。そのため通気性、透水性が劣悪になりやすい。他県における土地改良事業や水田の畑地化で有材心土破砕機が利用されているが沖縄では導入されていない。また、沖縄県ではち密度が山中式硬度計で30mmを超える非常に硬い土壌があり、琉球石灰岩などの礫が多いため既存の機器では対応が難しい。そのため沖縄型の有材心土破砕機を開発する。また、県内に豊富に存在する石灰岩や未利用資源等を利用することで地域資源の活用と持続性の高い物理性改善を図る。

成果の内容・特徴

  • 既存の機器では心土破砕と下層への資材埋設は別の工法となるが、本事業において心土破砕と同時に下層土に資材を投入する有材心土破砕機を沖縄県の重粘な土壌に適応した機器として開発した(図1、図2)。当機器は、深さ25cmから60cmに巾6cmで均一に資材を投入埋設することができる(図3)。
  • 投入資材の選定は各混合割合の投下試験より、国頭マージ地域で疎水材を主体とし、酸度矯正も兼ねる琉球石灰岩砕石(7号:5~2.5mm)と牛糞堆肥3割混合、他の地域では有機物主体とし、牛糞堆肥と琉球石灰岩石粉(5~0mm)5割混合が適する。
  • 施工距離はフレコン(資材量0.8m3)あたり33mである。資材費を施工5m巾、バガス堆肥+石粉混合資材(4,200円/m3)を用いて計算すると、資材費は20,487円/10aとなる。作業能率の計算に施工距離33m、資材投入時間55.3秒/フレコン、補給時間118.5秒/回を用いると、10a当たりの作業時間は資材補給を含めて18分23秒、1時間当たりの作業能率は32aである。
  • 施工1年後の投入された資材巾は、石灰岩砕石+堆肥混合に変化はないが、堆肥+石粉混合資材は巾がやや狭まる。資材投入部分にはサトウキビの根が多く分布し、透水性も良好である(図4)。
  • 圃場透水性(インテークレート)は国頭マージにおいて、石灰岩7号砕石+堆肥3割混合区、モミガラ区の基準浸入度(Ib)が1000mm/h以上で高く、施工半年後でも効果がある(表1)。ジャーガルでは全処理区においてIbが1000mm/h以上で、資材による差は見られない。

成果の活用面・留意点

  • 投入資材として琉球石灰岩を用いるとアルカリ化するので、対象作物に留意する。
  • 投入資材として有機物のみを用いる場合は、投下が難しいため補助者が必要である。
  • 80馬力トラクターでも施工は可能だが、通常は100馬力以上が望ましい。また自重による圧密化が懸念されるので圃場は乾いた状況で施工する。
  • 機器の製作は使用トラクターに対応し、メーカーでの受注生産とする。

具体的データ

図1

図2

図3

図4

表1

(儀間 靖)

その他

  • 研究課題名: 沖縄型有材心土破砕機の開発と効果検証
                        農地下層における炭素貯留技術の開発(2010年)
  • 予算区分: 国庫補助(特別調整費)、国庫受託(温暖化プロジェクト)
  • 研究期間: 2008~2009年度、2010年度
  • 研究担当者: 儀間 靖、宮丸 直子、伊波 聡
  • 機器製作委託: スガノ農機