九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

ソラマメのわた黒変の要因

要約

ソラマメのわた黒変は、ホウ素欠乏によって莢の海綿状組織の細胞壁に障害が生じた結果、ポリフェノール酸化酵素と増加したポリフェノールが反応して酸化黒変することにより発生する。

  • キーワード: ソラマメ、わた、黒変、ホウ素欠乏、ポリフェノール
  • 担当: 鹿児島農総セ・生産環境部土壌環境研究室
  • 代表連絡先: Tel:099-245-1156
  • 区分: 九州沖縄農業・生産環境・土壌肥料
  • 分類: 研究・参考

背景・ねらい

出水地域の秋まき春どり作型のソラマメにおいて、莢の海綿状組織(わた)が黒変する生理障害が発生し、生産流通上の問題となっている。わた黒変は、気温が上昇する収穫後期(4月中旬以降)に多く見られ、その発生は上位節(15節以上)に多い。また黒変が生じた莢では、健全莢よりもわたのホウ素含量が少ないことが明らかになりつつある。そこで水耕栽培試験において、1わたの黒変がホウ素欠乏で発生すること明確にする、2ホウ素含量と黒変発生との関係を明らかにするとともに、3わた黒変の発生機作を探究する。

成果の内容・特徴

  • 上位節開花期以降のホウ素欠除処理によってわた黒変が発生し(図1)、ホウ素欠除処理が早いほど黒変発生の影響は大きい(表1)。
  • わたのホウ素含量が概ね20ppm以上では黒変の発生はみられないが、10ppm以下では黒変が発生する可能性が高い(図2)。障害莢のわたでは、細胞壁の異状が認められる(図1)。
  • 黒変が生じたわたのポリフェノール含量は、健全莢に比べて明らかに高い(図3)。また、障害莢のわたでは細胞壁の障害によって、ポリフェノール酸化酵素と増加したポリフェノールの反応が可能となり、わたが黒変する(データ省略)。

成果の活用面・留意点

  • 植物体中のホウ素は、細胞壁のペクチン質架橋に関与し、細胞壁の構造を安定化する働きがある(松永ら2003)ことから、ホウ素欠乏によってわたの細胞壁のペクチン架橋が維持できず、細胞壁に障害が生じると考えられる。
  • わた黒変発生の要因解明によって抑制対策を確立することが可能になり、商品収量の増加が見込める。

具体的データ

表1

図1

図2

図3

(鹿児島県農業開発総合センター)

その他

  • 研究課題名: 地球温暖化に対応した農業生産技術等の研究開発
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2009年度
  • 研究担当者: 時村 金愛、餅田 利之