九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

促成ピーマンのかん水施肥栽培における適正な堆肥施用量

要約

促成ピーマンのかん水施肥栽培における堆肥施用量は、養分収支および土壌への腐植供給を考慮すると、牛ふん堆肥2t/10a程度が適正である。 

  • キーワード: ピーマン、かん水施肥栽培、牛ふん堆肥
  • 担当: 鹿児島農総セ・生産環境部・土壌環境研究室
  • 代表連絡先: 電話099-245-1156
  • 区分: 九州沖縄農業・生産環境
  • 分類: 研究・参考  

背景・ねらい

促成ピーマンの慣行栽培では、有機物および化学肥料の施用量が多い傾向にある。一方、近年導入が図られているかん水施肥栽培は、作物の生育に合わせて少量の養水分を多回数で供給するため、化学肥料の利用効率が高いとされており、これまでの慣行栽培とは異なる施肥体系を検討する必要がある。過去にかん水施肥栽培における有機物施用を前提とした化学肥料の削減などの報告はあるが、かん水施肥栽培における有機物施用量を検討した例は多くない。
そこで、促成ピーマンのかん水施肥栽培における有機物施用量について検討する。 

成果の内容・特徴

  • 促成ピーマンのかん水施肥栽培において、堆肥施用量が0~4t/10aの範囲では、その施用量の多少と果実収量との関係は判然としない(図1)。
  • 地上部の窒素・リン酸・カリの吸収量は、堆肥2t/10a施用で4t/10a施用と同じであるため、それを超える施用量は土壌への養分残存量の増加につながる(表1)。
  • 栽培後の土壌の可給態リン酸含量は、栽培前に比べ、堆肥2t/10a施用により2.7mg、
    4t/10a施用により9.8mg/100g増加しており、堆肥施用量の多少に応じて増加する傾向を示す(表2)。
  • 全炭素・全窒素は、堆肥無施用の場合減少する傾向で、栽培による土壌腐植の消耗がみられる。一方、堆肥2t/10a施用では、全炭素・全窒素ともにほぼ横ばいであり、堆肥4t/10a施用では増加傾向が認められることから、堆肥施用による土壌への腐植供給の効果が認められる(表2)。
  • 堆肥施用による果実収量への効果は判然としないが、土壌腐植の維持には、有機物の施用が必要であり、養分収支をふまえた適正施用量は、牛ふん堆肥で2t/10a程度である。

成果の活用面・留意点

  • 本試験の供試土壌は、厚層多腐植質黒ボク土である。
  • 本試験で供試した牛ふん堆肥の成分含有率(分析値)は、現物あたり水分41.9%、窒素1.63%、リン酸2.50%、カリ2.64%、全炭素19.6%である。
  • この堆肥施用(2t/10a)にあたっては、堆肥のリン酸やカリなどの肥料成分を考慮し、化学肥料施用量の削減を図る必要がある。

具体的データ

表

図1

表1

表2

 

その他

  • 研究課題名: 地力に対応したかん水施肥栽培技術の確立
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2004~2008年度
  • 研究担当者: 有村恭平、桑代涼子、餅田利之、時村金愛、柳川辰己