九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

鹿児島県におけるバレイショ栽培土壌酸性化の実態

要約

赤黄色土で栽培されるバレイショは,石灰資材の無施用および過剰な化学肥料の施肥により強酸性を呈する土壌で,交換性アルミニウム含量も高く,交換性カルシウム含量は,調査した92%のほ場で土壌診断基準値以下である。

  • キーワード: バレイショ、強酸性、交換性カルシウム含量、交換性アルミニウム含量
  • 担当: 鹿児島県農研セ・土壌環境研究室
  • 代表連絡先: Tel:099-245-1156
  • 区分: 九州沖縄・生産環境
  • 分類: 技術・参考

 背景・ねらい

鹿児島県の赤土バレイショ産地である長島地区では、そうか病発生を回避するため石灰質資材や土壌改良資材の投入が控えられているほ場が多く、pHの著しい低下など土壌生産力への影響が懸念されている。また、近年、原因不明の生育障害が多発生しており、生育不良を補うために更なる多肥栽培が一般化し、悪循環に陥っている。加えて輪作作物であるサツマイモへの障害も発生してきており、これらの問題を解決するため、長島地区の赤土バレイショほ場を対象に、現地調査を実施し、土壌実態を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 土壌pHの平均は4.3でpH4.5以下のほ場が全体の79%、pH4.0以下の地点も37%に達し、強酸性土壌の実態が明らかとなった(図1)。
  • 交換性カルシウムは平均3.8meq/100gで、基準値(6.8~8.3meq/100g)以下の地点が全体の92%で、ほとんどのほ場がカルシウム不足である(図1)。
  • 交換性アルミニウムは平均3.3meq/100gで、土壌保全対策事業定点調査(1999~2001年)中の畑作ほ場(n=15点)の平均1.2meq/100gより約3倍高くなった。また、交換性アルミニウムはpHが4.5以下になると急激に増加する(図2)。
  • 最もpHの低い第1グループはpHの平均は3.9で、16地点(全体の14%)、第2グループは平均4.1で、47地点(全体の42%)で第1、第2グループで全体の56%を占め、早急な対応が必要である。また、これらの地点は植物栄養分である交換性カルシウムが低く、生育抑制に関わる交換性アルミニウムが高い傾向である(図3)。
  • 長島地区の赤土バレイショ地帯での土壌は、pH調整の目安としてpHを0.5上げるために炭酸カルシウム換算で約150kg/10aの施用が必要である(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 今回の調査対象地域は、鹿児島県出水郡長島町赤土バレイショ栽培地帯114地点である。また、各土壌分析基準値は鹿児島県基準値である。
  • 離島に分布する赤土バレイショ栽培地帯も同様の傾向である可能性が高い。
  • 土壌酸性化の原因はバレイショ栽培特有の土壌管理にあり、今後、そうか病を抑制しつつ、収量性向上や生育障害回避が可能となる新たな土壌管理技術の確立が必要である。

具体的データ

図1 

 図2

図3

表1

その他

  • 研究課題名: バレイショ栽培における環境負荷軽減対策技術確立試験
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2007~2008年度