九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

多腐植質黒ボク畑土壌に適する可給態窒素の簡易評価法

要約

これまでに提唱されてきた可給態窒素の簡易評価法の中では、熱水抽出性窒素測定法、熱水抽出性無機態窒素法、マイクロ波抽出法が多腐植質黒ボク畑土壌に適する。操作の煩雑性や迅速性を考慮すると、熱水抽出性無機態窒素法が優れる。

  • キーワード: 可給態窒素、簡易評価法、多腐植質黒ボク土、熱水抽出性窒素
  • 担当: 鹿児島農開セ大隅支場・環境研究室
  • 代表連絡先: Tel:0994-62-200
  • 区分: 九州沖縄農業・生産環境
  • 分類: 技術・参考 

背景・ねらい

南九州シラス台地上の厚層多腐植質黒ボク土畑では、豊富に存在する家畜排せつ物由来堆肥(家畜ふん堆肥)の有効利用が切望されているが、その連年施用は溶脱窒素の増大を招くことが解明されている。この溶脱窒素軽減のためには、土壌中の可給態窒素を評価して窒素収支を改善する施肥法が有効な手段となる。
そこで、提唱されてきた種々の可給態窒素の簡易評価法と公定法の静置培養法との関係を解析し、多腐植質黒ボク畑土壌に適する可給態窒素の簡易評価法を選定する。

成果の内容・特徴

  • 簡易評価法による窒素量と静置培養法による可給態窒素量との関係では、マイクロ波抽出法、次いで熱水抽出性無機態窒素法、熱水抽出性窒素測定法の順に高い相関関係が認められる。これら3法は、電子レンジやオートクレーブを利用した強熱処理による抽出法である(表1)。
  • 熱水抽出性窒素測定法とマイクロ波抽出法による窒素量は、可給態窒素量と有意な相関を認めるものの、これら両法による抽出液は有機態窒素画分で、抽出液の分解を伴う操作が必要である(表1、図1、図3)。
  • 熱水抽出性無機態窒素法(土壌1に対して5倍量の純水を加え、オートクレーブで121°C、1時間強熱。冷却後、常法により無機態窒素を定量)は、可給態窒素を過大評価する傾向にあるものの、抽出液が無機態窒素画分で、抽出液の分解を伴う操作がない(表1、図2)。

成果の活用面・留意点

  • 簡易評価法によって得られる窒素量は、作物の窒素吸収量や収量との関係を明らかにすることで、窒素収支改善のための家畜ふん堆肥の窒素施用量決定に資することができる。
  • 供試土壌は、家畜ふん堆肥の7年間から19年間の連用年数が異なる4つの連用試験の多腐植質黒ボク普通畑土(20点)である。
  • 多腐植質黒ボク土壌は、畑地土壌生産性分級図によってその分布が把握できる。

具体的データ

表1

 図1

図2

図3 

その他

  • 研究課題名: シラス台地上の畑作地帯における畜産由来有機性資源の循環利用に伴う環境負荷物質の動態解明と環境負荷低減技術の開発
  • 予算区分: 指定試験事業
  • 研究期間: 2006~2010年度