九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

豚舎汚水から回収されたリン酸結晶(MAP)の土壌中における溶解性

要約

豚舎汚水から回収されたリン酸結晶(MAP)中のリン酸は、水溶性ではなくク溶性である。その為、酸性の国頭マージで速く溶解し、埋設後5ヵ月目には過リン酸石灰と同等の溶解率を示す。また、MAPに含まれる窒素の溶解率は非常に高く、苦土やリン酸よりも溶解スピードが速い。

  • キーワード: 豚舎汚水、リン酸、MAP、溶解性
  • 担当: 沖縄農研セ・土壌環境班、畜産草地研・浄化システム研究チーム
  • 代表連絡先: Tel:098-840-8503
  • 区分: 九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
  • 分類: 技術・参考

背景・ねらい

リン酸は枯渇が懸念される有限資源であり、わが国は必要なリン鉱石のほぼ全量を輸入に依存している。一方、豚舎汚水には高濃度のリン酸が含まれており、放流する際には浄化が義務付けられている。近年豚舎汚水からリン酸結晶(MAP:MgNH4PO4・6H2O)を回収する技術が開発され、その回収MAPの肥料利用が求められている。本試験ではMAPの化学分析と、沖縄県の主要土壌型における溶解性から肥料としての特性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 過リン酸石灰や重焼リンが殆ど水溶性(速効性)リン酸であるのに対し、MAPは水溶性リン酸は僅かで殆どがク溶性リン酸である(表1)。
  • 105°C12時間加熱処理したMAPは、結晶水および窒素の揮散による影響で、全リン酸が約44%、ク溶性苦土が約25%となり、全窒素は約3.8%となる。また、水溶性リン酸の割合が顕著に増加しているため、MAP加熱処理物はMAPと区別する必要がある(表1)。
  • 土壌中におけるMAP中リン酸の溶解性は、土壌型により異なり、国頭マージは5ヵ月目で約80%溶解し、島尻マージは7ヵ月目で約40%溶解し、ジャーガルでは7ヵ月目で約20%溶解する。これはMAPのク溶性リン酸の特徴によるもので、土壌pHの差により溶解スピードが異なる。一方、大部分が水溶性リン酸の過リン酸石灰や重焼リンは約1ヵ月で殆ど溶解し、その後は溶解しない(表1、表2、図1)。
  • MAPに含まれる窒素の溶解率は非常に高く、MAP中の各肥料成分の溶解スピードは一様でなく、窒素>苦土≧リン酸の順である(図1、図2)。

成果の活用面・留意点

  • 土壌中における溶解性は、各材料約4mm粒状物の一定量(土壌未混和)をガラス繊維ろ紙に包みニガウリ栽培のマルチ内土壌に埋設し、定期的に堀出した試料の重量と各成分の全量分析から溶解率を求めたものである。

具体的データ

表1

表2

 図1

図2

 

その他

  • 研究課題名: 結晶化法によるリン除去回収技術の簡易化・低コスト化手段の開発
  • 予算区分: 委託プロ(実用技術)
  • 研究期間: 2006~2008