九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

とんこつラーメン用小麦新品種「ちくしW2号」の育成

要約

半数体育種法により育成された小麦新品種「ちくしW2号」はとんこつ用のラーメン適性に優れる。また、「ミナミノカオリ」に比べて、早生で収量性に優れ、縞萎縮病抵抗性で耐穂発芽性を有する。

  • キーワード: 小麦、ラーメン用、半数体育種法、縞萎縮病抵抗性、耐穂発芽性
  • 担当: 福岡農総試・農産部
  • 代表連絡先: Tel: 092-924-2937
  • 区分: 九州沖縄農業・水田作
  • 分類: 技術・普及

背景・ねらい

福岡県は北海道に次ぐ全国第2位の小麦生産県であるとともに、「博多ラーメン」などの低加水で細いストレートめんを使用したとんこつラーメンが有名であるが、これらの原料は外国産に頼っている。一方、現在生産されている小麦はほとんどがうどん用であり、用途としてはすでに飽和状態にある。
そこで、県産小麦の新たな需要創出のために、とんこつラーメン用としての適性が優れる硬質小麦品種を短期間に育成する。

成果の内容・特徴

「ちくしW2号」は、2003年4月に福岡県農業総合試験場において、ラーメン適性良、早生、多収、縞萎縮病抵抗性および耐穂発芽性を育種目標に、「東山40号(後のハナマンテン)」を母、「西海186号(後のミナミノカオリ)」を父として人工交配を行った組合せに由来する。2003年12月から2004年3月に養成したF1に対してトウモロコシ花粉を用いた半数体育種法により固定化を図り、以降系統選抜を行うとともに、生産力検定試験において栽培性ならびにラーメン適性等による選抜を行った。この中で、特にラーメン適性については、福岡製粉倶楽部技術研究会で評価した。
硬質小麦「ミナミノカオリ」と比較して、次のような特徴がある(表1)。

  • 出穂期、成熟期ともに2日程度早い。稈長は同程度であるが穂長は長い。ふ色は'褐'、粒質は'硝子質'である。
  • 耐穂発芽性は'難'で優れる。播性は' I '、縞萎縮病には'強'、赤かび病には'やや弱'、耐倒伏性は'強'で同程度である。
  • 容積重は同程度で、千粒重は大きく、収量性は優れる。検査等級、原粒の粗蛋白質含量は同程度である。
  • 製粉性および60%粉品質は同程度であるが、アミロース含量はやや低く最高粘度は高い。
  • 生めんの色相が良く、粘弾性に優れ、茹で伸びし難く、とんこつ用ラーメン適性に優れる。

成果の活用面・留意点

  • 福岡県内の平坦地に適する。
  • 品種登録(第19702号、2010年8月13日)、福岡県準奨励品種採用(2008年10月22日)。
  • 栽培にあたっては、原粒粗蛋白含量12.0%を目標とし穂揃期追肥を基本とする。
  • ラーメン官能評価は、中華めん適性評価法(食品総合研究所昭和60年)を一部改変し、細いストレートめん用の商品を対象とした茹で伸びや食感に重点を置いた評価法を確立し実施。なお、製めんは加水率28%、麺線厚1.2mm、切り刃24番角で行い、茹で時間は1分間とした。また、茹で伸びは5分後で評価した。
  • 福岡製粉倶楽部技術研究会は、福岡製粉倶楽部、日清製粉株式会社、日本製粉株式会社、鳥越製粉株式会社、東福製粉株式会社、大陽製粉株式会社で構成。
  • 現在のところ他県への許諾予定はない。

具体的データ

表1

(馬場 孝秀)

その他

  • 研究課題名: ラーメン専用オリジナル小麦品種の育成
  • 予算区分: 県特
  • 研究期間: 2004~2008年度
  • 研究担当者: 古庄 雅彦、塚﨑 守啓、松江 勇次、内村 要介、山口 修、馬場 孝秀、髙田 衣子、宮崎 真行、濱地 勇次
  • 発表論文等: 古庄ら(2009)福岡農総試研報、28:39-44