九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

高温登熟性に優れた極早生水稲品種「つや姫」の大分県における特性

要約

「つや姫」は「ヒノヒカリ」と比較して、高温条件下での品質低下が少なく、成熟期が14日程度早い極早生の良食味品種であり、大分県で2011年産より認定品種に採用予定。

  • キーワード: 水稲、つや姫、高温登熟性、極早生種、奨励品種
  • 担当: 大分県農研セ・農業研究部・水田農業G
  • 代表連絡先: Tel:0978-37-1160
  • 区分: 九州沖縄農業・水田作・作物
  • 分類: 技術・普及

背景・ねらい

「つや姫」(旧系統名山形97号)は、「山形70号」を母、「東北164号」を父として、山形県立農業試験場庄内支場(現山形県農業総合研究センター水田農業試験場)で交配が行われ、2008年(平成20年)に山形県の奨励品種に採用された。
育成地評価によると「つや姫」は「コシヒカリ」と比較し、高温登熟性に優れ、短稈で収量性、食味が優れる。
近年、大分県の水稲栽培では登熟期間が高温化傾向にあり、1等米比率が急激に低下しており、高温登熟条件下で品質低下の少ない、新品種の導入が必要となっている。
また、気象災害リスクの分散、収穫・乾燥調製機械・施設の有効利用のため「ヒノヒカリ」より熟期の早い品種の導入が要望されている。
そこで、「つや姫」の大分県における特性を検討した。

成果の内容・特徴

「つや姫」の大分県における特性は「ヒノヒカリ」と比較して以下のとおりである。

  • 出穂期は「ヒノヒカリ」より10日程度早く、成熟期は14日程度早い(表1)。
  • 稈長は「ヒノヒカリ」よりやや短い(表1)。
  • 穂長は「ヒノヒカリ」よりやや短く、穂数はやや多い(表1)。
  • 千粒重は「ヒノヒカリ」よりやや重く、籾数は「ヒノヒカリ」と同程度(表1)。
  • 登熟歩合は「ヒノヒカリ」より高い(表1)。
  • 収量は「ヒノヒカリ」より多い(表1)。
  • 検査等級は「ヒノヒカリ」より優れる(表1)。
  • 外観品質は「ヒノヒカリ」より良く、高温登熟性は「強」である(表1、表2)。
  • いもち病抵抗性遺伝子はPii,Pikをもつと推定される(表1)。
    現在のところ場内および現地圃場において葉いもち、穂いもちの発生は認められておらず圃場抵抗性は不明であるが、育成地(山形県)の評価では葉いもち圃場抵抗性は「強」であった(表1)。
  • 脱粒性は「難」で、穂発芽性は「やや難」である(表1)。
  • 食味は「ヒノヒカリ」と同程度もしくは優れる良食味である(表1、表3)。

成果の活用面・留意点

  • 2011年産より認定品種に採用し、約200ha作付予定である。
  • 普及対象は平坦地~山間地域の「ヒノヒカリ」作付地域とする。
    なお、当面は作付地域を限定し、標高200m以上を対象とする。
  • 極早生種の導入されていない地域で作付する場合、「つや姫」にカメムシ類が集まる可能性があるので防除を徹底する。

具体的データ

表1

表2

表3

(清水 康弘)

その他

  • 研究課題名: 水稲の奨励品種選定
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2007~2010年度
  • 研究担当者: 清水 康弘、長谷川 航、野村 健秋、安井 利昭、白石 真貴夫、大成 忍、北園 景一、首藤 さち子