九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

水稲栽培におけるメタン発酵消化液の液肥利用

要約

メタン発酵消化液を水稲の液肥として移植後の潅水と同時に施用する場合、施用窒素成分量が、慣行栽培の2倍となる量で、慣行の水稲と同等の収量・品質が得られる。また、基肥としての消化液の窒素利用率が高まる施用時期は代かき直前である。

  • キーワード: 液肥、メタン発酵消化液、水口施用、水稲、窒素利用率
  • 担当: 佐賀農業セ・有機・環境農業部有機農業研
  • 代表連絡先: Tel:0952-45-2141
  • 区分: 九州沖縄農業・水田作
  • 分類: 技術・参考

背景・ねらい

肥料費の高騰にともない、水稲生産コストの削減のために未利用バイオマス資源を代替資材として利活用する技術が求められている。生ごみ、家畜ふん及びし尿等をメタン発酵させて得られるバイオガスのエネルギー利用にともなって、副産物である消化液についても農業場面での液肥として利用されるようになったが、詳細な肥料効果は不明な部分が多く、利用技術の開発が求められている。
そこで、メタン発酵消化液を水稲の液肥として利用する場合の、施用量と基肥としての施用時期について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • メタン発酵消化液を水稲の液肥として移植後及び穂肥時に潅水と同時に水口から流入させる場合、施用窒素量を慣行の化学肥料の2倍とすることで、慣行と同等の収量と品質の玄米が得られる(表1、表2)。
  • メタン発酵消化液の窒素の利用率が高い施用時期は代かき直前であり(表3)、移植後の施用よりも施用量を削減できる。

成果の活用面・留意点

  • 佐賀県鳥栖市で産生されたメタン発酵消化液を使用した。2009年の試験に使用した消化液は全窒素0.22%(アンモニア態窒素が約2,000ppm、硝酸態窒素が約100ppm、有機態窒素が約100ppm)で、全炭素が約1%、リン酸(P2O5)が約400ppm、及びカリ(K2O)が約1,600ppmであった。メタン消化液はロットによって全窒素で1,500~3,300ppmの変動があるため、市販のアンモニア検出キット(パックテスト等)でアンモニア態窒素を把握して施用する。
  • メタン発酵消化液のリン酸含量が少ないため土壌診断を行い、必要な場合は別途リン酸を補給する。
  • 本情報の現地実証試験における移植後の施用方法は、ほとんど落水し足跡のみ水がたまっている水田に5cmの水位となるまでに、等間隔の時間で施用量の1/6ずつバキュームカーから流入させ、施用終了後10分の「押し水」を行った。
  • 施用の際は、降雨によるオーバーフローがないよう天候を考慮して計画的に施用することが望ましい。メタン発酵消化液はアンモニア臭があるため、施用する水田の選定に留意する。
  • メタン発酵消化液はアンモニア臭があるため、施用する水田の選定に留意する。
  • 代かき前の消化液の施用方法については効率的な施用方法の検討が必要である。

具体的データ

表1

表2

表3

(佐賀県農業試験研究センター)

その他

  • 研究課題名:バイオガスさがんモデル事業(県単)
  • 研究期間: 2009~2010年度
  • 研究担当者:三原 実、森 則子、百武 千文(三神普及セ)、山口 喜久一郎(三神普及セ)