要約
水稲種子の塩水選開始から温湯消毒開始までの時間が1時間以内であれば、苗立率の低下は少ない。また、普通期水稲の育苗において、なたね油かすやカニがらの施用量を窒素成分で箱当たり1.5gとすることで、化学肥料での中苗育苗と同等の苗質が得られる。
- キーワード: 有機栽培、水稲、育苗、塩水選、温湯消毒、施肥
- 担当: 佐賀農業セ・有機・環境農業部・有機農業研究担当
- 代表連絡先: Tel:0952-45-2141
- 区分: 九州沖縄農業・水田作
- 分類: 技術・参考
背景・ねらい
有機農産物に対する高いニーズに対応して有機農業を実践しようとする農家に対する技術支援のために、それぞれの個別技術について、有機農業の栽培条件下での検証を進めている。
水稲の有機栽培の実態調査において、種子予措から育苗までの課題として、1種籾の塩水選後、籾水分を15%まで乾燥させるのが通常であるが、塩水選から種子を乾燥しないまま温湯消毒を行う場合、作業間の時間が長いと播種後の苗立率が低下すること、2有機質肥料を利用した育苗で生育不足となることがあげられている。
このため、塩水選から温湯消毒までの許容時間と、中苗育苗において播種直前に床土に施用する有機質肥料の適量を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 水稲種子の塩水選から種子を乾燥しないまま温湯消毒を行う場合、塩水選の開始から温湯消毒開始までの時間が1時間以内であれば、発芽勢や苗立率の低下は少ない(図1)。
- 普通期水稲の中苗育苗において播種直前に施用する有機質肥料の量は、なたね油かすやカニがらで、窒素施用量を1.5g/箱とすることにより、化学肥料の窒素施用量0.8g/箱での育苗と同等の草丈、葉齢、および葉色となる(表1)。
成果の活用面・留意点
- 塩水選後、速やかに籾水分を15%まで乾燥させる場合は、温湯消毒による苗立率の低下は少ない。
- 吸水が進んだ状態で温湯消毒を行うと、胚の発芽に関係する酵素による代謝が阻害され、発芽勢や苗立率が低下すると考えられる。
- 本成果で示した中苗育苗での有機質肥料施用量の目安は、播種前5日以内程度の場合に適用できる。施肥の播種前日数が長い場合やプール育苗では本情報の施肥量は適用できない可能性がある。
- 育苗に用いた化学肥料(細粒)、なたね油かす(粉状)、カニがら(粉状)は一般に市販されているもので、それぞれの全窒素濃度は現物で4%、6%、3%である。
- 有機質資材を施用した育苗において、育苗箱でのカビ発生は、2カ年の育苗試験において認められなかった。
具体的データ
その他
- 研究課題名: 水稲及びタマネギ等における有機栽培技術の検証(県単)
地域特性に対応した有機農業生産技術体系の構築(受託) - 予算区分: 県単、受託(省資源プロ)
- 研究期間: 2008~2009年度
- 研究担当者: 三原実、森則子、信原浩二