要約
ビール大麦の生育中期(節間伸長期)に発現する葉の白斑には劣性の2遺伝子が関与すると推定される。また、白斑の発現による収量、外観品質、麦芽品質への影響は小さい。
- キーワード: ビール大麦、遺伝様式、白斑、農業形質
- 担当: 福岡農総試・農産部・麦類育種チーム(二条大麦育種指定試験地)
- 代表連絡先: Tel:092-924-2937
- 区分: 作物、九州沖縄農業・水田作
- 分類: 研究・参考
背景・ねらい
ビール大麦において、葉に白斑が発現する現象がしばしば認められ、これは節間伸長期である生育中期において顕著となる(図1)。この発現は、品種・系統によってその発生の有無が異なることから、遺伝的要因によるものと考えられる。一方、ビール大麦の品種育成においては収量性、外観品質および麦芽品質の改善が重要な育種目標となっているが、白斑の有無がこれら農業形質に与える影響については明らかにされていない。このため、白斑が選抜の対象となる形質であるかは不明である。
そこで、ビール大麦品種育成における選抜の知見に資するため、白斑の遺伝様式を明らかにするとともに、白斑の有無が農業形質に及ぼす影響を解析する。
成果の内容・特徴
- 白斑の有無が異なる親から作出したF1では白斑が発現しない(表1)。また、同様の組合せの半数体倍加(DH)系統では白斑の出現率は2遺伝子による分離比に適合する。さらにF2世代でも2つの劣性遺伝子による分離比に適合する(表2)。したがって、白斑の発現には、劣性の2遺伝子が関与すると推定される。
- 白斑の発現による収量、外観品質および麦芽品質への影響は小さい。なお、白斑有の系統群は白斑無の系統群に比べて、稈長は短く、穂数は多く、整粒歩合は低い。その他の項目については統計的に有意な差は認められない(表3、表4)。
成果の活用面・留意点
- 本成果情報は、ビール大麦品種「しゅんれい」を主体に解析した結果である。
具体的データ
その他
- 研究課題名: ビール大麦生育中期における葉の白斑の遺伝様式の解明
- 予算区分: 指定試験
- 研究期間: 2006~2008年度
- 研究担当者: 馬場孝秀、塚﨑守啓、髙田衣子、甲斐浩臣、古庄雅彦、五月女敏範(栃木農試栃木分場・ビール麦品質改善指定試験地)
- 発表論文等:馬場孝秀ら(2008)日作九支報74:31-32