九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

分娩前乳汁の目視検査による牛乳房炎の診断方法

要約

分娩前7~10日の乳汁を採取し、その色と粘り具合およびCMT凝集反応を判定することにより乳房炎が診断できる。色が血乳、白~淡黄色で粘りが水状、初乳状の乳汁は乳房炎の疑いが強いのでCMTによる検査が必要である。

  • キーワード: 分娩前、乳汁、乳房炎、診断、経産牛
  • 担当: 福岡農総試・家畜部・乳牛チーム
  • 代表連絡先: Tel:092-925-5232
  • 区分: 九州沖縄農業・畜産・草地(大家畜)

背景・ねらい

乳牛の乳房炎は分娩後の発症が多いことから、分娩前に乳房炎を診断・治療することで生乳出荷のない期間に治癒させることが望ましい。近年は乳汁の粘度とCMT所見で乳房炎診断した事例が報告されているが、酪農家や関係者の多くは分娩前に乳汁を採取することが無いため、正常な乳汁の所見すら不明で乳房炎を見分けることが困難なのが現状である。今後、酪農家自身による予防的診断法として普及させるには、乳汁の外見から正常と異常を段階的に分類できるマニュアルが必要である。そこで、分娩前7~10日前に採取した乳汁の外見を体系的に分類することによる乳房炎診断技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 分娩前乳汁を用いた牛乳房炎の早期診断は、始めに乳汁の色を区分し、次に乳汁の粘りで正常または異常の疑いを判別する。異常の疑いがある乳汁はCMTを実施する(図1)。
  • 色が黄~黄土色、半透明色の乳汁、粘りが練乳~水アメ状の乳汁は乳房炎の原因菌が存在せず、体細胞数も低値であることから正常である(表1)。
  • 色が血乳色、白~淡黄色の乳汁、粘りが水状、初乳状の乳汁は原因菌が陽性のため、乳房炎の疑いがある。原因菌が陽性の乳汁は体細胞数が多く、乳腺の炎症が強い(表1)。
  • CMT凝集反応が陽性の乳汁は原因菌陽性率が高く体細胞数も多いことから乳房炎である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 獣医師または農家自身による経産牛が対象の予防的診断法として普及を図る。
  • 分娩予定7~10日前に乳頭口を消毒して採取し、採取後はディッピング液で消毒する。
  • 採材方法、判定方法の詳細は別途カラー印刷資料を提供する。

具体的データ

図1

表1

表2

(北崎 宏平)

その他

  • 研究課題名: 乳房炎の分娩前診断および治療技術の確立
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2009~2010年度
  • 研究担当者: 北崎 宏平、平山 一人(NOSAI筑後川流域広域家畜診療セ)、渡邊 美佐江(朝倉普)、田口 博子(両筑家保)、村上 弘子(両筑家保)、森永 結子、梅田 剛利、馬場 武志