九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

新規開発の乳頭清拭装置の利用による搾乳時の乳頭の清浄効果

要約

搾乳時の確実な乳頭清拭作業を目的に開発された乳頭清拭装置は、従来の紙タオルや布タオル清拭に置き換えて利用することで、乳頭の清浄度を高めることができる。

  • キーワード: 搾乳、乳頭清拭装置、タオル清拭、機械、乳牛
  • 担当: 熊本県農研・畜研・大家畜研究室
  • 代表連絡先: Tel:096-248-6433
  • 区分: 九州沖縄農業・畜産・草地(大家畜)
  • 分類: 技術・普及

背景・ねらい

搾乳時の乳頭清拭は、乳頭表面の汚れを除去し牛乳中への混入を防止すること、乳頭表面の付着細菌数を低減し乳房炎の発生リスクを抑えることを目的に行われ、同時に適切な乳頭刺激は射乳ホルモンの分泌を促すなどの効果がある。しかし、通常のタオル等による清拭では、必ずしも的確な清拭作業が実施できていないことも多くみられる。
そこで、簡単に確実な乳頭の清拭作業を実現するために開発された乳頭清拭装置を搾乳作業に利用したときの導入効果を酪農家において実証する。

成果の内容・特徴

  • 開発された乳頭清拭装置は、清拭カップ中への洗浄水の噴射とともに、カップ内に装着された3種のブラシが、それぞれ乳頭の根元、側面、先端を乳頭の大きさや形状に応じて正逆転しながら一体的に稼働して、乳頭の汚れを除去する(図1)。洗浄水は噴射と同時に、再汚染防止のため常時吸引排出される。乳頭表面に付着した水分は、洗浄後、乳頭をカップから抜き取る時に根元用ブラシで掻き取り、吸引空気流により除去される。
  • 本装置の導入により、乳頭側面の汚れの指標であるATP値が低下する。同様に、乳頭先端のアルコール綿拭き取りスコアについても、本装置の導入により、汚れの少ない1と2が大部分を占めるようになり、汚れの顕著なスコア3が減少する(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 本装置は、主にパーラーにおける乳頭清拭を目的に、生研センターとオリオン機械株式会社で共同開発されたものである。
  • 固着した汚れなど汚れの状態により、装置だけでは確実な清拭作業が行えない場合があるため、予備洗浄が必要になる場合もある。
  • 搾乳終了後、次回搾乳時の清潔度を保つため、清拭カップと各種ブラシの洗浄・殺菌及び洗浄水タンクの清掃を確実に行う必要がある。
  • この調査は社団法人畜産技術協会及び生研センターによる委託研究で、北海道と栃木県においても同様な調査が実施され、その結果では、乳房炎の新規発症率および体細胞数に低下傾向がみられる。また、複数の雇用労働者や経験の浅い研修生が本装置を用いて清拭作業を行ったとき、経験者と同レベルの洗浄度で作業できることが確認されている。

具体的データ

図1

表1

(上村 しおり)

その他

  • 研究課題名: 乳牛の先進的精密飼養管理技術現地調査
  • 予算区分: 受託(生研センター)
  • 研究期間: 2009~2010年度
  • 研究担当者: 上村 しおり、三角 亮太、時田 康広、住尾 善彦