九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

捕獲イノシシ肉呈味成分向上のための処理および熟成法

要約

捕獲イノシシの肉を利用する場合、十分な放血を行い、と体は早期に冷却し、低温(5°C)熟成を4日程度行うと、呈味成分の優れた熟成が可能である。

  • キーワード: イノシシ、放血、呈味成分、熟成
  • 担当: 福岡農総試・家畜部・工学養豚チーム
  • 代表連絡先: Tel:092-925-5232
  • 区分: 九州沖縄農業・畜産・草地(中小家畜・畜産環境)
  • 分類: 技術・参考

背景・ねらい

全国的にイノシシによる農林水産物被害は増大し、福岡県における被害額は平成20年度で5億円に達しており、鳥獣被害の4割を占めている。その対策として捕獲数も増加し、一部肉資源として利用されている。しかし、捕獲イノシシは様々な自然環境で自生しており、イノシシ肉の処理は捕獲者の経験をもとに行われることが多いため、と殺条件や処理方法が肉質にどう影響しているか不明な点が多く肉質や味にばらつきがある。そこで、イノシシの肉質向上技術を確立するために、捕獲季節、と殺方法ならびに熟成等がイノシシの肉質に及ぼす影響について検討する。

成果の内容・特徴

  • と殺方法の違いにより、放血の程度に差がみられる。心臓穿刺によると殺・放血は食肉検査場で処理した豚肉と同等の放血が可能であり、頸部血管切断や銃器と殺後の放血と比べ優れている(図1)。
  • 秋季に捕獲したイノシシの脂肪は、冬季捕獲に比べ酸化しやすいため(図2)、秋季捕獲イノシシはと殺後早急な冷却処理が必要である。
  • 筋肉中のグルタミン酸含量は個体毎にばらつきはあるものの、熟成とともに緩やかに増加する(図3)。
  • と殺後早期に冷却(氷冷)することにより、筋肉中のイノシン酸(IMP)含量は熟成中に増加して、4日程度で最大となる。と殺後に冷却しない場合、熟成期間中を通して低値を推移する(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 「鳥獣害防止技術の開発」における捕獲イノシシの処理および保存技術の参考資料として狩猟関係者や鳥獣肉処理施設で利用できる。

具体的データ

図1

図2

図3

図4

(笠正 二郎)

その他

  • 研究課題名: イノシシ肉の処理及び熟成による肉質への影響
  • 予算区分: 国庫受託(実用技術開発)
  • 研究期間: 2007~2009年度
  • 研究担当者: 笠正 二郎、山口 昇一郎、上田 修二、森 美幸、徳満 茂、村上 徹哉
  • 発表論文等: 新たな農業水産政策を推進する実用技術開発事業「営農管理的アプローチによる鳥獣害防止技術の開発」成果報告書