要約
TDN73%、CP15%、乾物摂取量20kgを基準に設計し、乾物摂取量が20kgを超える分は自給飼料分を増量して混合飼料(TMR)を調製給与すれば、泌乳成績も良好で、過肥や削痩はみられず、分娩後日数や泌乳量の異なる牛からなる牛群を一群管理できる。
- キーワード: 一群管理、TMR給与、自給飼料
- 担当: 佐賀県畜産試験場・大家畜部
- 代表連絡先: Tel:0952-45-2030
- 区分: 九州沖縄農業・畜産・草地(大家畜)
- 分類: 技術・参考
背景・ねらい
TMR給与は、栄養バランスのとれた飼料を省力的に給与することが可能となるなどのメリットがある。しかし、泌乳牛にTMRを給与する場合、泌乳期毎に2~3群に分けてのTMR調製が推奨されており、小規模な牛群では経済的メリットが少ない、TMR調製作業の負担が大きい、牛舎利用のレイアウトに制約を受ける等の問題がある。そこで、これらの問題を解消するため、一群管理による自給飼料を活用したTMR給与技術を検討する。
成果の内容・特徴
- TMRの調製は、TDN73%、CP15%、乾物摂取量20kgを基準に設計し、乾物摂取量が20kgを超える分は、自給飼料を増量する。また、利用する自給飼料の変化に伴い、濃厚飼料の配合量調整を行なう必要があり、TDN含量は70~74%とやや幅のあるものとなる(表1)。
- 乾物摂取量について、分娩後日数、体重、乳量、乳脂肪率から推定(日本飼養標準2006年版推定式より)した値と実測値を比較すると、推定より実際には多く飼料摂取させることができる(表2)。
- 乳量については、分離給与で管理時(前年同月)の平均乳量と比較して、やや多くなる(表3)。
- 乳成分については、粗飼料給与が十分すぎることから乳脂肪率が全期間をとおして高いが、その他の成分からみても、濃厚飼料の過不足、エネルギーとタンパク質のバランス等について問題となる傾向はみられない(表4)。
- 体重、BCSについては、一部の個体で、泌乳後期に脂肪がついてきたものもみられるが、分娩後の極端な削痩もなく概ね良好にコントロールすることができる(表5)。
成果の活用面・留意点
- 今回の成績は、平均産歴が3.3産、泌乳能力としてピーク乳量が約40kgの牛群を用いて、フリーストール牛舎で管理したものである。
- 乾物摂取量については、牛の状態、飼料の品質及び嗜好性、気候により大きく変動するので注意して観察し、給与量(あるいは各飼料の調製割合)の加減を行う必要がある。
- 調査期間が7ヶ月間のものであるため、更に長期間の調査結果を検討する必要がある。
- 小規模な酪農家でのTMR技術導入や、TMR調製作業の省力化を検討する際の参考となる。
具体的データ
(河野 宏)
その他
- 研究課題名: 酪農経営の継続のための未利用資源と和牛産子の活用方法の検討
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 2009~2010年度
- 研究担当者: 河野 宏、詫摩 哲也