要約
ルジグラス「Kennedy」の染色体を倍加した倍加処理当代「宮沖国1号」は有性生殖である。その放任受粉F1集団は形態特性に優れ、高採種特性を付加した有望系統の選抜が可能で、沖縄の畜産農家の多様化した要望に対応しうる育種素材である。
- キーワード: ブラキアリアグラス、有性生殖、倍加処理、形態特性、採種特性
- 担当: 沖縄県畜産研究センター・育種改良班
- 代表連絡先:Tel:0980-56-5142
- 区分: 九州沖縄農業・畜産草地(草地飼料作)
- 分類: 研究・普及
背景・ねらい
ブラキアリアグラスは4倍体以上のアポミクシスであるため、交配による育種操作が不可能で、倍数性が同じ有性生殖系統が必要である。近年、宮崎大学にて2倍体有性生殖品種であるルジグラス(旧称)「Kennedy」(Brachia riaruziziensis)から誘導体された多芽体等を用い、コルヒチン倍加処理による4倍体有性生殖系統「宮沖国1号」が作出された。
そこで、「宮沖国1号」の特性を明らかにし、育種材料としての有効性を確認する。
成果の内容・特徴
- 「宮沖国1号」およびF1集団は有性生殖であるため、高い形態的変異が観察される。「宮沖国1号」は流通品種に比べ形態的特性はやや劣るが、F1集団では流通品種に比べて稈長が最も高く、生育が旺盛で、沖縄県で利用可能である(表1)。
- F1集団の草型は評点で8とかなりほふくである。各節から発根が認められ、栄養繁殖による造成法の開発が可能である(表1)。
- 「宮沖国1号」の稔実率は10.9%でアポミクシス流通品種(Basilisk, Marandu, MG5)よりやや劣る。F1集団は16.2%とアポミクシス流通品種と同等である(表2)。
- 「宮沖国1号」の採種量は100.0g/aでアポミクシス流通品種よりやや劣る。F1集団は608.3g/aでアポミクシス流通品種と同等である(表2)。
- F1集団の稔実率のレンジは3.8~38.0%(図1)、採種量は10.8g/a~2760.7g/aとなり(図2)、高い変異が認められ、採種特性の高い有望系統の選抜が可能である。
成果の活用面・留意点
- 「宮沖国1号」は4倍体有性生殖であるため、交配育種母材として利用できる。
- 他品種と容易に交配するため、同系統の採種には隔離圃場が必要である。
- 「宮沖国1号」は品種登録申請予定である。
具体的データ
(幸喜 香織)
その他
- 研究課題名: 優良なルジグラス4倍体系統の作出
- 予算区分: 県単、JIRCAS運営費交付金
- 研究期間: 2007~2010年度
- 研究担当者: 幸喜 香織(沖縄畜研)、末永 一博(国際農研機構)、石垣 元気(宮大農)、蝦名 真澄、稲福 政史(沖縄畜研)、権藤 崇裕(宮大農)、明石 良(宮大農)
- 発表論文等: 1)Ishigaki G. et al.(2009)Grassland Sci. 55:46-51