九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

アグー精液凍結処理では室温静置時間を省略することで精子生存性が向上する

要約

アグー精液の凍結処理では、精子処理液としてBeltsville thawing solution(BTS)を用い、室温静置なしでBTSを遠心分離により除去後、冷却・凍結処理を行うと、運動精子率、精子細胞膜正常率および体外受精精子侵入率が向上し、アグー精液の凍結処理に有効である。

  • キーワード: アグー、凍結融解精子、凍結技術
  • 担当: 沖縄県畜産研究センター・飼養環境班
  • 代表連絡先: Tel:0980-56-5142
  • 区分: 九州沖縄農業・畜産・草地(大家畜)
  • 分類: 研究・参考

背景・ねらい

豚の精子は、凍結融解処理に伴うコールドショックや細胞障害を受けやすく、豚精子を凍結保存する際は、精子に対するコールドショックの抵抗性を緩和させるために、精子処理液を添加し、冷却・凍結前に精液を室温静置する方法が一般的であり、「豚凍結精液利用技術マニュアル(日本家畜人工授精師協会)」においても、精液を凍結前に数時間静置する方法が取られている。しかし、アグー種豚では射出時の濃度や活力などの精子性状が極端に劣るため、マニュアルに準拠して凍結精液を作製しても良好な結果が得られない。
そこで、本研究ではアグー種豚に適した精子凍結保存技術の確立を目的として、アグー精子の凍結保存に適した精子処理液(精漿(SP)、モデナ液(Modena)、BTS、D-glucose-PBS(D-PBS)およびCa-and Mg-Free Tyrodesolution(mTyrode))と冷却・凍結前の静置時間について検討する。

成果の内容・特徴

  • 各精子処理液における運動精子率は、BTSが最も高い(図1)。
  • 各精子処理液における精子細胞膜正常率では、BTSが最も高い(図2)。
  • 各静置時間における精子細胞膜正常率では、0時間区が、1および2時間区より運動精子率および前進運動精子率が高く維持される傾向を示す(図3)。
  • 各静置時間における体外受精の精子侵入率では、0時間区が、1および2時間区より有意(P<0.05)に高い値を示す(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本法は、アグー精液の凍結処理法であり、一般豚精液の凍結処理には適用できない。
  • 現段階では本法で作製した凍結精液による授精試験は行っていない。

具体的データ

図1

図2

図3

図4

(知念 司)

その他

  • 研究課題名: 琉球在来豚アグーの近交退化の緩和および増殖手法の確立(2)アグーの効率的繁殖技術の確立
  • 予算区分: 実用技術
  • 研究期間: 2005~2009年度
  • 研究担当者: 仲村 敏、大城 まどか、稲嶺 修、鈴木 直人、玉代勢 秀正、知念 司、吉元 哲兵(琉大農)、慶次 功(琉大農)、建本 秀樹(琉大農)
  • 発表論文等: 仲村ら(2005)沖縄畜研報、43:12-20