九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

ウシCランク胚を超急速ガラス化前に短期培養すると高い受胎率が得られる

要約

ウシ低ランク胚のうち、Cランク胚を採取後に短期培養すると、発育が見られ、FSD法で超急速ガラス化して移植すると、保存良質胚と同等の高い受胎率が得られる。

  • キーワード: ウシ、低ランク胚、培養、超急速ガラス化、受胎率
  • 担当: 福岡農総試、家畜部・畜産工学チーム、肉用牛チーム
  • 代表連絡先: Tel:092-925-5232
  • 区分: 九州沖縄農業・畜産草地(家畜)
  • 分類: 技術・参考 

背景・ねらい

体内受精胚は生産コストが高いため、一般的な採卵において2割程度採取される耐凍能の低い低ランク胚の有効活用が望まれる。低ランク胚は変性部分が30%以上を占め、凍結保存する場合、緩慢冷却・融解の過程で障害を受け、生存性が低下する。
そこで、低ランク胚を採取後培養して発育させ、融解後の高い生存率が期待できる超急速ガラス化(Fukuoka Straw Dilution:FSDhttp://farc.pref.fukuoka.jp/farc/seika/h16a/10-02.pdf)法で保存後移植し受胎率の向上、牛産子の増産を図る。

成果の内容・特徴

  • 低ランク胚のうちCランク胚を培養すると、7割以上の胚で発育ステージが進行し、発育ランクが向上する(表1)。しかし、Dランク胚においてはステージ進行およびランク向上は4割程度に留まり、良質ランクに発育しない(表1)。
  • 低ランク胚を採取後培養し超急速ガラス化保存すると、無培養と比べ融解後の発育が改善する。特に、Cランク胚は採取後の培養により融解後に良好な発育を示す。しかし、Dランク胚は培養しても融解後の発育が不十分なため、保存・移植には適さない(表2)。
  • Cランク胚を培養しFSD法で超急速ガラス化保存後移植すると、無培養の良質(A~B)ランクの保存胚と同等に高い受胎率が得られる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • ウシ低ランク胚の有効利用技術として、胚生産機関で利用できる。
  • 1日程度の培養後にガラス化保存した低ランク胚は、無培養の良質胚と同様に、発情7日目の受胚牛に移植した。
  • 胚培養に用いるβメルカプトエタノールは毒物指定であるため、保管、記録、廃棄等の取り扱いに注意する必要がある。

 具体的データ

表1

表2

表3 

 

その他

  • 研究課題名: 受胎率の高い胚移植技術の開発
  • 予算区分: 県単事業
  • 研究期間: 2005~2007年度