要約
矮性ネピアグラスおよびディジットグラス品種「プレミア」は、長崎県内における越冬率が93%以上であり、造成2年目の年間合計乾物収量がスーダングラスよりも高い。また、1番草の粗タンパク質含量およびin vitro 乾物消化率はスーダングラスと比べて同等かそれ以上である。
- キーワード: 矮性ネピアグラス、ディジットグラス、越年利用、乾物収量
- 担当: 長崎畜試・大家畜科
- 代表連絡先: Tel:0957-68-1135
- 区分: 九州沖縄農業・畜産・草地(草地飼料作)
- 分類: 技術・参考
背景・ねらい
西南暖地において、越冬性が高い暖地型イネ科牧草を越年利用することは、造成2年目以降の耕耘・播種が不用となることから、飼料作物栽培の省力化につながると考えられる。栄養繁殖で草地造成を行うネピアグラスの矮性晩生品種Dwarf-late(宮崎大学保有、以下、矮性ネピアグラス)は、九州南部および長崎県の島原地域で高い越冬性が確認されているものの、県内の他の地域では越冬性に関する知見は得られていない。また、種子での増殖が可能なディジットグラス品種「プレミア」については、九州管内における収量性や越冬性に関する知見は少ない。
そこで、矮性ネピアグラスおよびディジットグラスについて収量性を調査し、県内の現地における越冬性の確認を行い、粗タンパク質含量およびin vitro乾物消化率を測定することで栄養価を評価し、九州北部地域における越年利用の可能性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 矮性ネピアグラスは長崎県内5地域、ディジットグラスは長崎県内3地域において、造成2年目では越冬率93%以上と高い越冬性を示す(表1)。
- 造成1年目における年間合計乾物収量は、矮性ネピアグラスがディジットグラスよりも低く、スーダングラスは他草種と同等である(図1)。
- 造成2年目における年間合計乾物収量は、矮性ネピアグラスおよびディジットグラスが越冬株から再生するため、スーダングラスよりも高い(図1)。
- 1番草における粗タンパク質含量およびin vitro乾物消化率は、矮性ネピアグラスおよびディジットグラスが、スーダングラスと比べて、同等かそれ以上である(表2)。
成果の活用面・留意点
- 矮性ネピアグラスおよびディジットグラスは、長崎県の軽度の降霜地帯で、かつ低標高地域(概ね150m以下)において越年利用可能である。
- 矮性ネピアグラスおよびディジットグラスは造成1年目に十分定着させる必要がある。
具体的データ
その他
- 研究課題名 :越冬性の高い夏季飼料作物を利用した栽培体系の確立
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 2006~2008年度