要約
標高700mの九州高原地帯でセンチピードグラス草地の造成は蹄耕法でも3年目で植被率がほぼ100%なった。また造成したセンチピードグラスを用い、イタリアンライグラス、野草地と組み合わせることにより周年放牧が可能である。
- キーワード:センチピードグラス、イタリアンライグラス、周年放牧、繁殖雌牛、九州高原地域
- 担当:大分県農林水産研畜産・草地飼料担当
- 代表連絡先: Tel:0974-76-1216
- 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(草地飼料作)
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
近年、遊休農地を活用した放牧が盛んに行われ、その後景観維持と生産性向上から放牧用の牧草の導入が行われている。九州高原地帯では寒地型牧草の利用による周年放牧が確立しているが、草地管理が比較的容易であり、景観保全にも優れているシバ型牧草の利用が望まれている。
成果の内容・特徴
- 標高700m年平均気温12.6°Cの九州高原地域で暖地型牧草であるセンチピードグラスを1kg/10a播種、蹄耕法、耕起法とも造成2年目には冠部被度が75%を超え、3年目にはいずれの耕法もほぼ100%の被度となった(図1)。
- センチピードグラスの乾物収量の確保のため施肥時期、施肥量を4月、6月、7月、8月に窒素成分で2kg/10a行うことにより、乾物収量が増加する。特に春肥の効果が高い(表1)。
- 冬季放牧用牧草としてイタリアンライグラスの晩生品種を利用することにより、8月下旬播種で11月上旬に乾物収量385kg/10a、また、9月下旬播種で11月下旬に358kg/10aが確保できる(図2)。
- 野草地面積や草量により11月上旬より冬季放牧を開始する場合はイタリアンライグラスの8月下旬播種が必要で、12月より冬季放牧を開始する場合は9月下旬の標準播種で放牧草量は確保できる。
- センチピードグラス草地1.5ha、イタリアンライグラス草地2.0ha、野草地1.0haを組み合わせることにより、黒毛和種繁殖牛5頭の周年放牧が可能である(図3)。
成果の活用面・留意点
- 本成果は九州高原地帯だけでなく沖縄を除く西日本においても活用が可能。ただし、イタリアンライグラスによる冬季放牧技術について低標高地では8月播種は不適であり9月下旬以降の播種を行うこと。
- 蹄耕法についてはセンチピードグラス種子を播種後から、耕起法についてはセンチピードグラスの定着後それぞれ放牧による維持管理を行うこと。
具体的データ
その他
- 研究課題名:おおいた型放牧技術の確立肉用繁殖牛の周年放牧技術の実証放牧地の造成・管理技術
- 予算区分:県単
- 研究期間:2006~2009年度
- 研究担当者:金丸英伸、田中伸行、安高康幸、森学、人見徹、倉原貴美
- 発表論文等:田中ら(2007)日本草地学会誌、53(別号):28-29