九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

シンクロトロン放射光を用いた蛍光X線分析による茶葉中無機元素の非破壊計測

要約

シンクロトロン放射光を利用した蛍光X線分析手法により、荒茶を粉砕、錠剤成形して計測するだけで10種類の無機元素を非破壊で迅速に計測でき、その計測値はICP発光分光分析値と高い相関が認められる。

  • キーワード: 茶、シンクロトロン放射光、蛍光X線、無機元素
  • 担当: 佐賀茶試・製茶研究担当
  • 代表連絡先: Tel:0954-42-0066
  • 区分: 九州沖縄農業・茶業
  • 分類: 研究・参考

背景・ねらい

茶葉中無機元素の分析は原産地判別および肥培管理技術の改善等を行うために有効な手法であり、現状ではICP発光分光分析法(ICP-AES)を主として用いられているが、試料調整に時間を要し、また、強酸による分解を行うため危険を伴う。そこで、シンクロトロン放射光の高輝度かつ幅広いスペクトルを利用し、試料への照射時に発生するX線を測定して、迅速に元素を定性・定量する蛍光X線分析手法による茶葉中無機元素の非破壊分析法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 荒茶をサイクロンミルで粉砕後、200mgを精秤し錠剤成形(約3分)した後、シンクロトロン放射光を照射する。これにより発生する蛍光X線を測定(約5分)し、スペクトルを解析することで、無機元素を測定できる(図1)。
  • 入射X線強度18keVにおいて、茶葉中に含まれるK、Ca、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Br、RbおよびSrの10元素を測定できる(図2)。
  • 茶葉中の無機元素分析において、シンクロトロン放射光を利用した蛍光X線計測値とICP-AES分析値間には、高い相関が認められる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 化学分析の代替法としての活用が図られる。
  • 農業ならびに食品分野への放射光の有効利用が促進される。
  • 放射光を利用した蛍光X線計測には佐賀県立九州シンクロトロン光研究センター(SAGA-LS)のビームライン11番および15番を利用する。
  • 放射光を利用した蛍光X線計測における定量精度の向上のためには、元素含量の異なる茶標準試料による検量線の作成が必要である。

具体的データ

図1

図2

図3

(宮崎 秀雄、明石 真幸)

その他

  • 研究課題名: 永年作物におけるシンクロトロン光の利用法に関する研究
  • 予算区分: 国庫
  • 研究期間: 2008~2010年度
  • 研究担当者: 宮崎 秀雄、明石 真幸、石橋 弘道