九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

大海袋のまま脱酸素状態で保管できる荒茶貯蔵法

要約

大海袋で梱包された荒茶は、大海袋のまま密閉された貯蔵施設内に収容し、窒素ガスを連続注入して有圧にすることで、大海袋内の酸素濃度を短時間で低下でき、長期間貯蔵が可能である。 

  • キーワード: チャ、大海袋、脱酸素、荒茶貯蔵、窒素ガス
  • 担当: 鹿児島農総セ・茶業部・加工研究室
  • 代表連絡先: Tel:0993-83-2811
  • 区分: 九州沖縄農業・茶業
  • 分類: 技術・普及  

背景・ねらい

リーフ茶需要の低迷による在庫調整やドリンク茶需要の増大を背景に流通構造も変化しつつあり、荒茶の産地保管を要求されることが多くなっている。そのため、一時的な荒茶貯蔵施設の不足は深刻な状況となることもある。また荒茶貯蔵は、貯蔵中の自動酸化を避けるため超低温による保管や窒素ガス置換、脱酸素剤の封入が行われているが、出荷形態の大海袋からガスバリアー性資材に詰め替える必要があり、茶生産時期に作業が集中し多くの労力を要するほか、梱包資材等コスト高となっている。また、出荷先においては使用済みの梱包資材の処分費等も負担となっている。そこで、貯蔵施設内を窒素ガスで充填し、大海袋のまま保管できる新しい貯蔵法を検討する。 

成果の内容・特徴

  • 密閉容器に有圧下で1時間当たり容器容積程度の窒素ガスを連続注入することで、密閉容器に収容した大海袋内の酸素濃度は、10時間以内で1%以下に低下する(図2)。
  • 貯蔵施設内での大海袋内の酸素濃度推移は、6時間で1%以下となり、その後酸素濃度は低濃度で維持される(図1、図3)。
  • 大海袋内を窒素ガス置換した貯蔵法の6ヶ月後の品質変化およびビタミンCの減少は僅かである(表1)。
  • 従来の作業工程である大海袋からガスバリアー性資材への詰め替え作業が省略できる。

成果の活用面・留意点

  • 施設内圧力は0.01~0.05MPaで、大海袋内の酸素濃度が1%以下になり次第停止する。保管中は施設内圧力をモニターし、必要に応じて窒素ガスを注入する。また、施設内は無酸素の雰囲気であるため、人により大海袋を取り出すときは、施設内を充分に換気し、酸素濃度18%以上を確認し施設を開放する。
  • 貯蔵施設は既存の施設への応用が可能であるが、施設内の冷蔵は必要である。
  • 古く、吸湿した大海袋は移り臭がすることがあるので新しいものを使用する。
  • 大海袋はクラフト紙/LDPE/クラフト紙の三層で構成され、LDPEの酸素透過量は6.0L/m2/dayである。
  • 本貯蔵法による年間コストは、荒茶200t規模で従来法に比べ300万円程度削減できる。(削減可能な資材等はガスバリアー性資材、段ボール、労賃等であり、新規に必要な資材等は気密コンテナ等の容器、窒素ガス発生装置等である。)

具体的データ

 図1

図2

図3

表1 

その他

  • 研究課題名: 大海袋内を窒素ガス置換する荒茶貯蔵法
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2005~2007年度