九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

茶園における石灰窒素入り複合肥料を用いた窒素負荷低減技術

要約

茶園で石灰窒素複合肥料を用い40kgN/10a/年に減肥した体系では、土壌浸透水の年平均硝酸態窒素濃度が10mg/L以下である。また、慣行肥料を用いる減肥より二番茶の生葉収量が増収する。

  • キーワード: チャ、石灰窒素、減肥、硝酸態窒素、窒素溶脱
  • 担当:熊本農研セ・茶業研究所
  • 代表連絡先: Tel:096-282-6851
  • 区分: 九州沖縄農業・茶業
  • 分類: 技術・参考

背景・ねらい

茶栽培において、生葉収量や製茶品質を維持しつつ、地下水中硝酸性窒素の環境基準を満たすには、茶園土壌からの浸透水の濃度が10mg/L以下となる施肥法を確立する必要がある。そこで、硝化抑制効果を持ち、土壌中の有機態窒素を無機化する機能を持つ石灰窒素を含む複合肥料を利用して減肥する施肥法について、窒素溶脱低減効果を実証する。

成果の内容・特徴

  • 慣行肥料を用いた40kgN/10a/年の減肥では、溶脱する硝酸態窒素量は45%程度少なくなり、石灰窒素入り複合肥料を用いると削減率は55%程度になる(表2)。
  • 慣行肥料を用いた減肥では、土壌浸透水中の硝酸態窒素濃度は年平均10mg/L程度であるが、石灰窒素入り複合肥料を用いると年平均8mg/L程度と低くなる(表2)。
  • 石灰窒素入り複合肥料を用いると、慣行肥料を用いるより二番茶が2割程度増収する(表3)。
  • 慣行肥料を用いると、施肥量が40kgN/10a/年でもうね間土壌のpHは表層で低くなるが、石灰窒素複合肥料を用いると、表層から60cmの下層まで適正域(4.0~4.5)である(図1)。

成果の活用面・留意点

  • この成果は、細粒褐色森林土を土層1mで充填したライシメータ茶園(20m2、一、二番茶を摘採)における試験結果である。
  • 石灰窒素を単肥で用いるとカルシウム量が5割程度多く供給される。このため、多量に施用した場合、製茶品質等に影響を及ぼすことがあるので注意する必要がある。
  • 石灰窒素入り複合肥料を用いた施肥体系の肥料費は、慣行肥料による減肥体系より約1割高いが、荒茶の収益増で回収できる(表3)。
  • 降水の多寡などの気象条件により、土壌浸透水中の硝酸態窒素濃度が一時的に10mg/Lを上回る場合がある。

具体的データ

表1 

 表2

表3

図1

 

その他

  • 研究課題名:点滴チューブ及び新機能性肥料を利用した窒素負荷低減技術の実証
  • 予算区分:県単
  • 研究期間:2004~2007年度