要約
走行速度を時速1.7kmとし、カンザワハダニに対しては処理間隔をできるだけ短くした片道処理、チャノミドリヒメヨコバイに対しては5日おきの往復処理を実施することで両害虫の被害を低減できる。なお、チャノキイロアザミウマに対する防除効果はない。
- キーワード: チャ、乗用型送風式捕虫機、カンザワハダニ、チャノミドリヒメヨコバイ
- 担当: 宮崎総農試・茶業支場・栽培加工科
- 代表連絡先: Tel:0983-27-0355
- 区分: 九州沖縄農業・茶業
- 分類: 技術・参考
背景・ねらい
カンザワハダニやチャノミドリヒメヨコバイはチャの重要害虫であるが、有機栽培茶園などでは有効な防除手段がないため、減収や品質低下など大きな被害を受けている。そこで、物理的防除手段である乗用型送風式捕虫機の両害虫に対する使用法を明らかにする。
成果の内容・特徴
- カンザワハダニに対しては、時速1.7kmでの片道処理と往復処理では防除効果に差はみられない。また、時速0.9kmに走行速度を遅くし片道処理しても防除効果は高まらない(図1)。
- カンザワハダニを対象に時速1.7kmでの片道処理を実施すると、80%程度のカンザワハダニ成虫が除去され、寄生葉率も低下するが、残効がないことから処理の2日~3日後には処理前の密度まで回復する(図2)。
- カンザワハダニを対象に1日おき、または3日おきに時速1.7kmでの片道処理を実施すると、無処理に比べて部分的に褐変するような大きな被害を受ける葉の割合が減少する。この減少程度は、1日おきに捕虫処理する方が3日おきに捕虫処理するよりも大きい(図3)。
- チャノミドリヒメヨコバイに対しては、時速1.7kmでの片道処理よりも往復処理で高い防除効果が得られるが、チャノキイロアザミウマに対しては、処理回数を増やしても防除効果は高まらない(図1)。
- 萌芽期以降に2日おき、または5日おきに捕虫処理を実施すると、チャノミドリヒメヨコバイの密度が低い(二番茶試験)時には2日おき処理の方が被害防止効果が高いが、密度が高い(三番茶試験)時には処理間隔の差はみられない。なお、チャノキイロアザミウマに対する被害防止効果は認められない(表1)。
成果の活用面・留意点
- 本機のカンザワハダニおよびチャノミドリヒメヨコバイに対する防除効果は化学農薬を散布した場合よりも低いが、被害軽減効果は認められることから、両害虫に対して有効な防除手段がない有機栽培茶園などで活用できる。
- カンザワハダニが増加する一番茶や二番茶の摘採前に、1日おきに捕虫処理を実施するのは現実的ではないため、3日おきの処理を基本としながら、本種が多発生した場合に処理間隔をできるだけ短くする方法がよい。
- チャノミドリヒメヨコバイの成虫は飛翔能力が高いため、時速0.9kmでの捕虫処理では容易に隣のうねや茶園外に逃亡することから、時速1.7kmで走行する。
具体的データ
その他
- 研究課題名: 暖地茶園における生物機能を活用した減農薬病害虫防除技術の体系化と実証
- 予算区分: 生物機能プロ
- 研究期間: 2006~2008年度