九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

着果促進処理作業が省力可能な単為結果性ナス新品種「佐賀N1号」

要約

「佐賀N1号」は、着果促進処理作業の省力化を目的として育成した促成栽培用の単為結果性を有する長形ナスF1新品種である。「筑陽」と比較して、草勢、収量性、外観品質および漬物加工における食味は同等であり、一果重が重く、果実の首部径が大きく、ボリュームがある。

  • キーワード: ナス、単為結果性、促成栽培、長形
  • 担当: 佐賀農業セ・野菜花き部・野菜育種研究担当
  • 代表連絡先: Tel:0952-45-2141
  • 区分: 九州沖縄農業・野菜・花き
  • 分類: 技術・普及

背景・ねらい

ビニルハウス等の施設を利用したナスの促成栽培では、通常、着果促進剤を用いた単花処理を行い、着果および果実の肥大を促し、生産の安定を図っている。しかしながら、その処理には多くの時間(全労働時間の約30%)と労力を要することから、生産者の大きな負担となっている。そこで、着果促進処理作業の省力化を目的として、本県の主要栽培品種「筑陽」と同等の形質で促成栽培に適した単為結果性ナス新品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「佐賀N1号」は、欧州ナス品種「ミレダ」と「リマ」を単為結果性の育種素材として、国内の主要栽培品種「筑陽」や在来品種「橘田」と交配した後代から選抜した「筑陽系1」を種子親、「橘田系1」を花粉親としたF1品種である(図1)。
  • 「佐賀N1号」は、促成栽培期間中の着果促進処理を行わなくても果実が正常に肥大し、着果促進処理を行った「筑陽」と同等の収量性を有する(図3)。
  • 「佐賀N1号」は、「筑陽」と比較して、草勢、果皮色、果形、果長および尻部径が同等であり、一果重が重く、首部径が大きく、ボリュームのある果実である(図2、表1)。
  • 漬物加工における食味官能評価は、「筑陽」と同等の良食味であり、肉質が「筑陽」より緻密でしまっており、外観品質が優れる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 適用作型は促成作型である。
  • 着果促進処理が不要であることから省力化が可能である。
  • 定植後が高温で樹勢が不安定な場合、単為結果性の発現も不安定となるので着果促進処理を行う。
  • 十分な単為結果性を発揮させるために、低温期の管理温度を12°C以上とする。
  • 適応範囲は佐賀県内の促成栽培地域とする。
  • 本品種は2010年9月15日に品種登録の出願が公表された。

具体的データ

表1

図2

図3

表1

(佐賀県農業試験研究センター)

その他

  • 研究課題名: ナス科野菜における単為結果性新品種の開発(2001~2005年度)
    生食適性等新規ニーズに即した単為結果性ナス新品種の開発(2006~2009年度)
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2001~2009年度
  • 研究担当者: 木下 剛仁、石橋 泰之、西美 友紀、中島 寿亀