要約
流水育苗ポット台は、1トレイに12株の9cm育苗ポットを置き、15mmピッチのかん水チューブにより、それぞれの水路を通じ各ポットにかん水する。イチゴ炭疽病の罹病拡大を防止するとともに、頭上かん水方法と比較し、約10分の1に節水できる。
- キーワード: 流水育苗ポット台、イチゴ、炭疽病、かん水、節水
- 担当: 長崎農林技術開発セ・干拓営農研機構究部門
- 代表連絡先 :Tel:0957-35-1272
- 区分: 九州沖縄農業・野菜・花き
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
近年、イチゴ産地においては品種改良など、高品質化に向けた取り組みがなされているがいずれの品種も炭疽病に弱く、育苗期間の栽培管理が重要課題となっている。このため、水滴が飛散することなく各育苗ポットに直接かん水する方法により、炭疽病の罹病拡大を防止する流水育苗ポット台を開発する。
成果の内容・特徴
- 流水育苗ポット台は、50cm×50cmのトレイに9cm育苗ポットを12個設置でき、15mmピッチのかん水チューブにより、それぞれのポットに通った水路を通じ、各苗の株元にかん水する(図1)。ポット台の傾斜は20%(高さ10cm×長さ50cm)である。
- 給水部分に仕切り板を設け、各ポット水路口へのかん水チューブの穴数を同一にすることで、育苗ポットへの給水量の安定を図る(図1)。
- 同量の水を用いてかん水した場合、かん水10分間の育苗ポットへの流入量は平均198mlで、頭上かん水の約10倍となり、かん水量を10分の1に節水できる(図2)。
- イチゴ炭疽病罹病率は頭上かん水より低く、さらに雨よけと併用することで著しく炭疽罹病株率は低くなる(図3)。
- 苗の生育は、頭上かん水と同等である(表1)。
成果の活用面・留意点
- ランナー採取時での使用及び野菜、花き等9cmポットによる育苗に使用できる。
- 流水育苗ポット台による育苗では、基準(2.88m2に10.5cmポット108個)より約10%育苗面積を広くする。また、育苗棚及び育苗床は水平にする。
- 給水部分の仕切り板の間隔は30mmであり、仕切り間に2つ以上のかん水口を配置するため、15mm以下のピッチ、片面かん水のかん水チューブの使用が望ましい。
- かん水チューブの目詰まりやかん水ムラを避けるため、かん水に使用する水質に注意するとともに、かん水チューブ表面の汚れを定期的に拭き取る。また、育苗ポットを設置する際は、給水口との位置に注意しかん水の流入を確認することが望ましい。
- 流水育苗ポット台は1トレイ600円で市販中。10a分の苗生産にはポット台600枚(7,200株分)と専用チューブ300mが必要である。
具体的データ
(長崎県農林技術開発センター)
その他
- 研究課題名: 施設野菜栽培環境改善技術の確立
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 2009~2011年度
- 研究担当者: 宮嵜 朋浩、藤田 晃久、吉田 満明、片岡 正登
- 発表論文等: 特許取得(特許第4431774号)